英語完全征服

2005/2/9 松竹試写室
英語学校で知り合った男に一目惚れしたヒロインの奮闘記。
古典的なハリウッドのラブコメを連想させる。by K. Hattori

 役所の窓口に英語ができる人間が誰もいないのは都合が悪いという理由から、業務命令で英語学校に通い始めた地方公務員のヨンジュ。彼女は学校の受付で出会った若い男ムンスに一目惚れ。英会話の基礎クラスで隣同士の席になったのも運命の導きと信じ、彼の気を引こうと猛烈なアタックを開始するものの、ムンスは暮らす受け持ちの金髪教師キャシーに熱を上げている様子。だがあるきっかけでキャシーと親しくなったヨンジュは、彼女の手助けもあってムンスに急接近するのだが……。

 ハードな時代劇アクション映画『MUSA/武士』が既に日本でも公開されているキム・ヨンス監督が、韓国の英語熱をモチーフに作ったラブコメディ。ヒロインのナ・ヨンジュを演じるのは、日本映画『英二』にも出演していたというイ・ナヨン。女たらしのパク・ムンスを演じるのは、日本でも大ヒットした映画『僕の彼女を紹介します』に出演していたチャン・ヒョク。思い込みの激しい女性と遊び人に見えてじつは純粋な男が、すったもんだの末に結ばれるという定番の筋立ては、戦前のハリウッドで作られたスクリューボール・コメディを思わせる軽快なタッチ。そこにアニメを入れたり、ゲーム画面を模したシーンを挿入したりと、あれこれ工夫をして現代の空気を混ぜているのが楽しい。

 英語学校が舞台になっているものの、韓国の異様なまでの英語熱(発音を矯正するために子供の舌を整形手術してしまうとか!)そのものがテーマになっているわけはない。英会話学校に通う人たちが「英語が喋れる自分」にどんな幻想を持っているのかはさておき、この映画の主人公たちにはそれぞれ英語を喋れるようにならねばならぬ切実な理由が用意されている。どんなに苦労をしようとも、どんなに心を傷つけられようとも、英語学校通いは是が非でもやめられないのだ。登場人物の行動に「かせ」を作るのは脚本の基本。この映画はその基本をきちんと守っているから、映画を観ている側も素直に感情移入できるのだ。

 いろいろと新しい味付けはしてあるし、韓国ならではのさまざまなエピソードも交えてはあるが、映画の骨格はきわめて古典的。彼に恋人がいると思ったら妹だったなんて、今どきそんなのアリかよ!って感じ。でも映画全体のこの古風なスタイルが、僕には逆に気持ちよかった。「アイ・ラブ・ユ〜ウ」にも参りました。衆人環視の中でプロポーズすると周囲が拍手喝采というハリウッド映画にしばしばある場面を、きちんと消化して韓国という異質な場所の中で成立させているのにも感心した。ひょっとするとこの映画は、このクライマックス場面をやりたいためだけに作られていたのかもしれない。主人公たちが英語学校の生徒という設定も、映画全体にバタ臭い雰囲気をかもし出してクライマックスのために地ならししていたのではないかとさえ思えてくる。この監督のラブコメがもっと観てみたい。

(英題:Please Teach Me English)

4月上旬公開予定 新宿シネマミラノ、東劇ほか
配給・宣伝:アートポート
2003年|1時間53分|韓国|カラー|ヴィスタ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.eigoseifuku.jp/
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