カナダのトロントを舞台に、心に大きな痛みを抱え込んだ3人の女性たちが、新しい旅立ちへの第一歩を踏み出していく物語。主演はイタリアの大女優ソフィア・ローレン、アメリカのオスカー女優ミラ・ソルヴィーノ、カナダの女優デボラ・カーラ・アンガーの3人。これにイギリスからベテランのピート・ポスルスウェイトとマルコム・マクダウェル、フランスからジェラール・ドパルデューが加わるなど、そうそうたる顔ぶれの出演陣になっている。監督・脚本のエドアルド・ポンティはソフィア・ローレンとカルロ・ポンティの間に生まれた息子で、今回が長編映画の初演出となる。
映画としては3人の女優を直接からめず、三者三様の独立した物語として進行していく。オムニバス形式ではないが、各エピソードが他のエピソードと直接の接点を持たないという点で、オムニバス形式に近いものだと思う。しかし僕はこの映画を観て、だいぶ物足りなさを感じた。各人各様の思いや悩みはよくわかる。それぞれのエピソードは各自の受け持ち範囲で、それぞれにきちんとしたドラマを作っている。でも、本当のドラマはここから始まるのではないのかな〜、という気がしてしまうのだ。
この映画は3人のヒロインのドラマから、起承転結の「起承」あたりまで描いて、それで終わりにしている。これに僕は欲求不満を感じてしまう。この映画のラストシーンを経て、3人の人生がどう転がっていくかが、本来のドラマではないだろうか。ヒロイン3人がようやく同じ画面に出揃って、さてここから3人の間で何が始まるのか、何が生まれるのか……。それを描くなり、直接描かずとも観客に強く暗示しておくのが映画だと思う。
この映画がやっていることは、1時間半の映画3本から冒頭の30分ずつを持ち寄り、切ってつないで1時間半にしているようなものではないのか。彼女たちは新しい一歩を踏み出す。そこで何に出会うのだろう。彼女たちはどこに向かうのだろう。彼女たちはそこから帰ってきたとき、どんな風に変わっているのだろう……。
こんなことが気になるのは、映画の中で描かれている3人の人生がとても巧みに描かれていたからだ。彼女たちの苦しみや痛みは、生々しくてリアルだ。だからこそ僕はこの映画に、彼女たちの「癒し」というカタルシスがないことに不満を持ってしまう。彼女たちの今後が、とても気になってしまうのだ。
3人のヒロインにそれぞれ重大な秘密を持たせて、観客を一気に映画の中に引き込んでいくあたりはなかな上手い。主人公クラスの俳優たちだけでなく、脇の人物たちまできちんと描かれているのは、役者の力だけではなく、脚本や演出の力があってのことだろう。この監督が次の映画を撮るなら、その時はひとつのモチーフできっちりと1本の映画を撮ってほしいと思う。今回の映画は、そのための贅沢な習作のようなものだ。
(原題:Between Strangers)
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