プライド/栄光への絆

2005/04/07 UIP試写室
高校フットボールを素材にアメリカ社会をリアルに描写。
残るのはほろ苦い思い出。これぞ青春だ。by K. Hattori

 ピューリッツァー賞受賞作家H.G.ビッシンガーのノンフィクション小説「フライデー・ナイト・ライツ」を、ビリー・ボブ・ソーントン主演で映画化した青春スポーツ映画。テキサス州オデッサにあるパーミアン高校は、地元の人なら誰もが知るフットボールの強豪チーム“パンサーズ”で州内に勇名を轟かせている。1988年のパンサーズはゲインズという一流のコーチを雇い入れたのに加え、将来はプロ入り間違いなしという花形選手ブービーの活躍もあって、シーズン開始前から優勝間違いなしと町中の期待がかかる。だがシーズン開始早々、チームの要だったブービーが怪我で戦線離脱。優勝候補チームはいきなり平均以下のチームに成り下がってしまう。コーチのゲインズは町中の非難を浴び、家族は身の危険を感じるほどだったのだが……。

 物語はビリー・ボブ・ソーントン演じるゲインズ・コーチを軸に進行していくが、中身は若い選手たちそれぞれにもスポットを当てた集団劇になっている。手持ちカメラやコントラストの強い映像、BGMやモノローグなどの外部的な演出を極力抑えた演出は、実際にそこで起きている出来事を、そのままカメラで撮影してきたような生々しいドキュメンタリータッチ。選手役には実力のある若い俳優たちが多く配し、エピソードの核になる選手たちの人物や性格がしっかりと描かれている。17歳の青春が抱える現実のリアルな痛みが、観ている側にもヒリヒリと伝わってくる。

 そう。これは青春の「痛み」についての物語なのだ。スポーツで華々しい活躍をする選手たちだが、じつは町中の熱狂的な期待というプレッシャーに押しつぶされそうになっている。どこに行っても「期待しているぞ」「優勝しろよ」と声をかけられる。優勝経験のあるチームのOBたちが、優勝記念の指輪をちらつかせながら「がんばれ」とハッパをかける。フットボールで優勝することが、この小さな田舎町では大人の男として認められるための通過儀礼だとでも言わんばかりだ。こうした町の期待の他にも、選手たちはそれぞれの家庭に問題を抱えている。中でも叔父との暮らしの中でプロのスター選手になることを夢見るブービーと、高校時代に名選手だったという父親に重圧をかけ続けられるドンのエピソードが印象に残る。

 フットボールにはまったく興味も関心もない人が観ても、試合シーンの迫力には身震いするだろう。そして決勝戦でコーチが選手たちに「完璧になれ」と諭すシーンに感動するだろう。このシーンでは選手たちが共に「主の祈り」を祈るのだが、激しいスポーツの試合と「主の祈り」がこんなにぴったりと重なり合う映画なんて、僕は初めて観たように思う。

 通りすぎてゆく輝かしい青春の一コマを、スポーツを通して描いた作品。『がんばっていきまっしょい』にも似た、爽やかでいながら少しほろ苦い感動が残る青春映画の傑作だ。

(原題:Friday Night Lights)

5月14日公開予定 全国ユナイテッド・シネマ
配給:UIP
2004年|1時間58分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|DTS、SRD、SDDS:SR
関連ホームページ:http://www.uipjapan.com/pride/
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