NUMA(国立海中海洋機関)のエージェント、ダーク・ピットを主人公にした、クライブ・カッスラーの人気冒険小説シリーズを映画化。同じシリーズからは以前も「タイタニックを引き揚げろ」が『レイズ・ザ・タイタニック』として映画化されているのだが、完成した映画は原作者としても不本意なものだったらしい。そのためその後25年に渡って、同シリーズの映画化は凍結されてしまったのだという。四半世紀ぶりとなる今回の映画はシリーズ中でも屈指の人気作「死のサハラを脱出せよ」を映画化したものだが、「タイタニックを〜」に懲りたカッスラーは今回製作総指揮に名を連ねて映画の手綱をしっかり握っている。
南北戦争末期に歴史から忽然と消えた南軍の装甲艦テキサスを探すことに執念を燃やしているNUMAのダーク・ピットは、アフリカでその重要な手がかりを見つける。同じ頃WHO職員のエブァ・ロハス博士は、アフリカのマリを感染源とする新たな感染症を発見。内戦が続くマリへの入国をNUMAに依頼する。ところがロハス博士の入国を、快く思わない人々がいた……。
冒険に次ぐ冒険をダイナミックに描く大作だが、全体にモタモタして切れ味が悪い印象。それにもともと小さな話を、無理やりに大きく広げたような印象もつきまとう。映画の後半を観るとよくわかるのだが、作り手の目指しているのは現代の西部劇らしい。場所をアメリカ中西部の砂漠地帯から、世界最大の砂漠であるアフリカのサハラに移し、インディアンや騎兵隊の代わりに、マリの反政府部族トゥアレグ族を持ち出してくる。谷底を移動する主人公たちをトゥアレグ族が待ち伏せするシーンは、画面の構図から芝居の組み立てまでまるっきり西部劇そのものだ。列車に飛び乗るシーンもそうだろう。主人公たちが探しているのは南北戦争の装甲艦なんだし、原作がどうであれ、これなら話も全部アメリカ国内で収まるはず。せっかく話をアフリカまで広げるなら、アフリカでしかできない話を作ってほしいのに……。
監督はこれがデビュー作だというブレック・アイズナー。ディズニー会長マイケル・アイズナーの息子である。テレビドラマを何本か監督しているようで、今回の映画は脚本のトーマス・ディーン・ドネリーとジョシュア・オッペンハイマーと共に、テレビ映画『クライム・エンジェル』のチームがそのまま移行してきたもののようだ。
最初から最後までアクションの連続なのは悪くないが、山場ばかりではメリハリに欠ける。全体としてはかなり大味な映画で、アイズナー監督はまだ映画の大画面を持て余している様子だ。せっかくアフリカでロケしているのに、ロケーション撮影ならではのダイナミックな絵作りが味わえないのは残念。トム・クランシーのジャック・ライアン・シリーズのようにシリーズ化される可能性もあるが、その際は監督交代になることが望ましいかも。
(原題:Sahara)
|