四日間の奇蹟

2005/05/26 東映第1試写室
一度は夢をあきらめたピアニストが経験する奇跡とは?
いまいちピンと来ませんな〜。by K. Hattori

 第1回「このミステリーがすごい」大賞を受賞した浅倉卓弥の小説を、『陽はまた昇る』や『半落ち』の佐々部清監督が映画化したファンタジックなラブストーリー。左手の怪我が原因で演奏ができなくなった天才ピアニストの如月敬輔は、その現場で両親を失った少女・楠本千織を引き取る。知的障害を持つ千織だったが、彼女に天才的なピアノ演奏の輝きを見出した敬輔は、彼女と共に老人ホームや病院を慰問する旅を始めるのだった。そんなある日、ふたりは訪れた療養所で特別な出会いを体験することになるのだが……。

 主人公の敬輔を演じるのは、『半落ち』にも出演していた吉岡秀隆。彼と旅をする天才ピアノ少女千織役に尾高杏奈。療養所でふたりを出迎える介護師の岩村真理子役は石田ゆり子。ある事故がきっかけで、千織と真理子は共に負傷する。真理子は意識不明の重体。だがショックで気を失っていた千織が意識を取り戻したとき、その心は真理子のものと入れ替わっていた。敬輔と千織の身体に入り込んだ真理子はこの状況を周囲に秘密にするのだが、その間にも少しずつ真理子の身体は弱っていく……。

 なんだかこの設定、広末涼子主演映画『秘密』に似ちゃいませんかね〜。『秘密』は6年も前の映画なのだから、今さら似たような話を作るのなら『秘密』を凌ぐ何かがこの映画になければならない。ところが、この映画は『秘密』を超えているようには思えないのです。『秘密』は夫婦愛の物語にドラマを集約させて感動を呼ぶわけですが、『四日間の奇蹟』はいったい何が描きたかったんだろう。ここには敬輔と千織の親子に似た関係がある。真理子の結婚と離婚や、療養所の医師と妻にまつわる夫婦の物語がある。真理子の初恋の相手が敬輔だったという話がある。しかしこのどれが、映画の中心軸になっているのだろうか。

 物語の中心にいるのは敬輔だ。天才と呼ばれながら、不慮の怪我で夢を断念せざるを得なかった敬輔の無念。敬輔に指導されながらピアノ演奏家として成長していく千織は、敬輔の無念がとりついた依代だ。彼は一時的に千織を失ったことで、何を感じ、何を考えたのだろう。彼にとって真理子という女性は、どんな存在なのだろう。彼は「四日間の奇蹟」を経験して、どう変わったのだろう。

 映画のもうひとりの主役は真理子だが、彼女は自分を捨てて別の女性と結婚した元夫を、どんな目で見ているのだろう。彼にとって敬輔はどんな存在なのだろう。こうした大切なことが、この映画を観ていてもすんなり理解できない。特に元夫のエピソードは説明不足。嫁を追い出す姑たちも理解できないし、元妻危篤の知らせに新しい妻子をつれて病院に駆けつけるに至っては、この夫にはそもそも最初からデリカシーというものが欠如しているとしか思えない。

 物語は優しく温かいものを狙ったのだろうが、この映画は登場人物のキャラクターがどれも粗雑に思える。

6月4日公開予定 丸の内東映1ほか全国東映系
配給:東映
2005年|1時間58分|日本|カラー
関連ホームページ:http://4kiseki.biglobe.ne.jp/
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