千年湖

2005/06/03 松竹試写室
中国の武侠篇を思わせる韓国製のアクション時代劇。
スケールに見合わない小さなドラマ。by K. Hattori

 7世紀に朝鮮半島を統一した新羅(しらぎ)は、建国神話によれば紀元前57年に建てられた国だという。国家成立の過程では数多くの地方豪族たちが無念の血と涙を流していたが、その怨念と呪いは太祖の聖剣によって封印された……。それから千年近い歳月が流れる。周辺国の反乱に脅かされていた新羅は、ジンソン女王の忠実な部下ビハラン将軍の奮闘によりその威信を守っていた。だが女王の信任を受けるビハランを快く思わないものが、彼の恋人ジャウンビに謀叛の濡れ衣を着せて殺そうとする。この時、千年前の封印が解けた。追手から逃れて湖に身を投げたジャウンビに、千年前に新羅の太祖に殺されたアウタの怨霊が乗り移ったのだ!

 今から約千年前の朝鮮半島を舞台にしたアクション・エンターテインメントだが、物語の始まりはそれよりさらに千年前にさかのぼるというスケールの大きさ。しかしそんな背景の大きさに比べて、演じられているドラマが小さすぎるような気がする。千年の恨みを晴らそうとする怨念の脅威という大きな話は作ってあるが、それを受け止めるのは、ハンサムな将軍と恋人の女、将軍に思いを寄せる美しい女王の三角関係という陳腐なメロドラマだ。しかもこの三角関係も、どこかでボタンを掛け違えたように空回りしている。

 戦闘シーンの殺陣は個々の小さなアクションとして見ればそれなりの仕上がりだが、シーン全体としてはスケール感がほとんど感じられない。例えば新羅の太祖がアウタの集落を攻め滅ぼすシーンは、そこで長年に渡って歴史を紡いできたひとつの世界が終わるという悲壮感が感じられない。ビハラン将軍が反乱軍と戦う場面も、ゲリラと戦う局地戦のようにしか見えない。当時の新羅にかつての勢いはないとは言え、それでもかなりの大国だ。ビハランは号令ひとつで千人万人を動かす総大将のはずだが、どうも一緒に戦っているのは数十人止まりに感じられてしまう。画面に写っていないところにも、びっしりと兵士たちが控えているという気配を感じさせてほしいのに……。

 映画の冒頭で平和な村を襲われ絶滅させられたアウタ一族が、さしたる理由なしに自分たちを殺した新羅を恨むのは当然だろう。千年たっても新羅を滅ぼそうとする、その怨念の強さも納得できる。しかしなぜかこの映画では、アウタの怨念は封印しておくべき「悪霊」であり、新羅王朝は守らねばならないものとされている。これが僕には、どうもスッキリしない。どうせ新羅は滅びるんだから、「アウタの怨念で新羅は滅びました。これも因果応報です」でいいんじゃないの?

 この映画には、他にも話が途中でヘンな方向にねじれたり、話を途中で放り出してしまったような場面がいくつかある。王宮で女官が謀議を盗み聞きするエピソードも次につながっていないし、三角関係の話も途中でうやむやになってしまう。最初から脚本に問題ありだったのかも。

(原題:The Legend of The Evil Lake 千年湖)

8月上旬公開予定 シブヤ・シネマ・ソサエティ
配給・宣伝:彩プロ
宣伝・問い合わせ:ライスタウンカンパニー
2003年|1時間32分|韓国|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.seochon.net/sennenco/
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