アバウト・ラヴ/関於愛(クワァンユーアイ)

2005/06/10 映画美学校第1試写室
アジアの3人の監督が描く3組の若いカップルの物語。
台北を舞台にした第2話がいい。by K. Hattori

 日本・台湾・中国から3人の監督が集まり、東京・台北・上海の3つの都市を舞台にして、3つのラブストーリーを紡いでいくオムニバス映画。日本からは『弟切草』『マッスルヒート』の下山天監督、台湾からは『藍色夏恋』のイー・ツーイェン監督、中国からはチャン・イーパイ監督が参加している。製作の母体は日本で、東京のエピソードはもちろん、台北や上海のエピソードにも必ず日本人の俳優が絡む。映画の中心にあるのは「日本」という存在で、映画全体で「日本とアジア」や「アジアから見た日本」がテーマになっている。

 日本に漫画の勉強に来ている台湾の青年と、失恋したばかりの若い女性画家の出会いを描く東京編は、伊東美咲とチェン・ボーリンが主演。台湾に留学中らしき青年と、別れた恋人への想いを諦めきれない女性の交流を描いた台北編では、加瀬亮とメイビス・ファンが主演を務める。語学留学している日本人青年に、下宿先の女子高生が淡い恋心を抱くという最終話の上海編に出演するのは、塚本高史とリー・シャオルーだ。3つの物語はそれぞれ小さなエピソードで互いにつながり合う。東京編に登場する日本語学校の教師が上海編の日本人留学生になったり、やはり東京編の冒頭で電話に出てきた「鉄ちゃん」が台北編の主人公になったりという具合だ。

 東京編は物語の仕組みがわかりやすすぎて話としてはあまり面白くないのだが、渋谷の街がかなりしっかり描かれていたという印象を受ける。この挿話の本当の主役は「渋谷」そのものかもしれない。じつは僕も渋谷のデザイン専門学校に通っていて、そこにはヤオと同じように台湾から留学している同級生がいた。すごく優秀な学生だったけれど、彼は今頃どうしているだろうか……。とまぁそんな具合に、映画と個人の記憶は意外なところで結びつく。

 最後の上海編は、ヒロインがなぜ日本人の青年に恋心を抱くに至ったのかというきっかけが弱い。ここは脚本や芝居で、観客にもそれとわかる小さな取っかかりを作ってほしかった。また、恋人からの別れの手紙を破り捨てた後、その内容をきれいさっばり忘れてしまう主人公も不自然。好きなのに相手に気づいてもらえないという古典的な片思いの物語が悪いとは思わないが、要所をきちんと押さえておかないと、少女はただのグズ、青年はただの鈍感男になってしまう。

 東京編と上海編が話の面白さや仕掛けで観客をリードするのに対し、第2話の台北編は映画でしか表現できない映画的な空間を作ってくれた点で、もっとも優れた話に仕上がっていたと思う。海岸でふたりが頓珍漢な会話をするシーンが最高。監督は僕の大好きな『藍色夏恋』を撮ったイー・ツーイェン。さすが! ヒロイン役のメイビス・ファンは歌手だそうで、映画出演は10年ぶりだとか。彼女のガッチリした体型が、加瀬亮の痩せた体つきと好対照。月並みな失恋物語に確固たる存在感を与えている。

(原題:about love 関於愛)

9月公開予定 東京都写真美術館
配給:ムービーアイエンタテインメント
2004年|1時間42分|日中合作|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.aboutlove-movie.com/
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