ステルス

2005/09/16 SPE試写室
人工知能搭載の無人戦闘機が「意思」を持って暴走。
『2001年宇宙の旅』+『エネミー・ライン』。by K. Hattori

 アメリカ海軍が開発した最新鋭のステルス戦闘機タロンと、その操縦を任された海軍選り抜きのエースパイロット3人。だが最終訓練に向かう彼らのもとに、4人目のメンバーが加わることになった。それは人工知能搭載の無人戦闘機エディだ。高度な状況判断能力と作戦遂行能力を持つエディは、人間を超えた次世代の兵士。だがあるきっかけで、エディは人間の手を離れた暴走を始める……。

 映画の中にいろいろな要素を持ち込んで、それらが上手くかみ合わないままに終わってしまった印象。たぶん最初に考えたストーリーはもっとシンプルなものだったと思うのだが、そこにあれこれ補強要素を加えた結果こうなってしまったのだろう。こうなると、この映画がもともとは何を狙いにしていたのかがサッパリわからない。エースパイロット同士の友情や恋? 最新鋭戦闘機を巡る軍上層部と政治家の陰謀? 人工知能戦闘機とエースパイロットの異色バディムービー? 人間が創った新種の生命体が創造主である人間に牙をむく現代の「フランケンシュタイン」?

 最新CG技術を使った画像処理は確かに素晴らしい出来ばえで、実写映像とCGがまったく違和感のない状態で画面の中に混在している様子には改めて驚かされる。しかし映画館はCG映像の展示会ではない。問題は映画が面白いかつまらないかだ。いくら映像が最新鋭でも、お話がどれも何かの二番煎じや三番煎じにしか見えないのでは面白みも薄れるというものだ。しかしこの映画の場合、コンピュータの反乱は『2001年宇宙の旅』だし、人間と人工知能のコンビは『ナイトライダー』で、架空の軍事作戦を遂行しようとする戦闘機が制止不能になるのは『未知への飛行』、人工生命体が落雷で命を得るのは『フランケンシュタイン』、暴走した人工知能と人間が友情で結ばれるのは『ウォーゲーム』、敵陣に墜落したパイロットが追手から逃げるのは『エネミー・ライン』。軍隊内の恋愛話は『スターシップ・トゥルーパーズ』にも出てきたし、いったい全体、観客はこの映画のどこに新しさを感じればいいのだろうか。

 最初は人工知能戦闘機のエディに反発を感じていた主人公ベンが、孤立無援の戦いの中でエディと協力し合うという物語の流れ。しかしベンがなぜことさらエディに反発するのか、その理由がよくわからない。これは反発から和解へという、バディムービーの形式をただなぞるためだけの筋運びではないだろうか。物語には、まだまだ工夫の余地があったと思う。

 迫力満点の戦闘シーンなど見せ場も多いのだが、僕が面白いと思ったのは戦闘機同士のドッグファイトではなく、機体を制御できなくなったパイロットが緊急脱出する場面だった。このシーンは映画の中でもっともスリル満点の場面だが、だからといって「この場面だけでも観る価値あり!」とまでは言えないのが辛いな〜。

(原題:Stealth)

10月8日公開予定 日劇1ほか全国東宝洋画系
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2005年|2時間|アメリカ|カラー|スコープサイズ|SDDS、DTS
関連ホームページ:http://www.sonypictures.jp/movies/stealth/site/
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