七人のマッハ!!!!!!!

2005/11/02 GAGA試写室
往年の香港アクションを彷彿とさせるガチンコ活劇。
スタントマンたちは本当に命懸け。by K. Hattori

 タイの古式ムエタイという、それまであまり映画の中では馴染みのない格闘技を映画の中に持ち込み、主演俳優によるスタントを用いない体当たりの演技と、デジタル合成に頼らない生身のスタントの迫力で観客の度肝を抜いたタイ映画『マッハ!』。その迫力を何倍にもパワーアップしたのが、本作『七人のマッハ!!!!!!!』だ。『マッハ!』では武術の達人がひとりだけだったが、題名からわかる通り、今回の映画ではそれが7人になっている。(ただし全員が「武術」の達人というわけではない。)主役級の達人が7人で、タイトルに付く「!」マークも7つになった。

 タイ警察のデュー刑事はアジア最大の麻薬王ヤン将軍を逮捕したものの、相棒刑事を死なせてひどく落ち込んでしまう。彼は心の傷を癒すように、テコンドー選手でもある妹とスポーツ協会主催の慰問団に加わる。国境沿いの貧しい村で子供たちに囲まれ、ようやく笑顔を取り戻したデュー。しかしその直後、村に自動小銃で武装したゲリラ部隊が襲いかかる。何の抵抗もできないまま、次々と銃弾に倒れる村人たち。ゲリラはヤン将軍の手下たちで、村人を人質にして政府から将軍を取り戻す作戦なのだ。だがゲリラたちの目的はそれに留まらなかった。それを知ったデューは、村の広場に集められた人質たちと共にゲリラたちへの反抗を企てるのだが……。

 『マッハ!』の主人公は古式ムエタイの達人という背景があったが、この映画の主人公デューには、特にそうした背景が用意されていない様子。警察官という職業柄、何らかの格闘技は身に付けているのだろうと予想される程度のことだ。しかも他の6人に至っては、さらに背景がよくわからない。デューの妹は格闘技であるテコンドーの選手だから問題ないとしても、他のメンバーは、サッカー、セパタクロー、ラグビー、それに体操選手が男女1名ずつという布陣。これが自動小銃相手に、一体全体何が出来るというのか? いや、出来るのである! この映画は肉体的な素養に恵まれたヒーローたちが、特権的な強さを発揮する物語ではない。村を守るため立ち上がった人々が、力を合せて悪党たちを撃退する話なのだ。

 邦題『七人のマッハ!!!!!!!』は、黒澤明の『七人の侍』のもじりだ。村を襲う武装グループを、外来の人々と村人が力を合せて撃退するストーリーは、確かに『七人の侍』に似ている。しかしふたつの映画の共通点はそれだけだ。事件に巻き込まれるスポーツ選手を演じているのは、実際にスポーツの世界で活躍しているタイ人アスリートたち。彼らにそれぞれの競技に応じた見せ場を作ろうと脚本を工夫している内に、結果として『七人の侍』めいた筋立てになっただけなのではないだろうか。

 映画に登場するアクションシーンはものすごい迫力で、まさに命懸けのスタントが画面狭しと続く。映画のエンドロールでメイキングを見るとぞゾッとするぞ!

(英題:Born to fight)

12月公開予定 シネマミラノほか全国順次公開
配給:ギャガ・コミュニケーションズ 宣伝:キャガ宣伝【秋】、アルシネテラン
2004年|1時間35分|タイ|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.7mach.jp/
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