イン・ハー・シューズ

2005/12/07 錦糸町シネマ8楽天地(シネマ6)
話をうまくまとめるシャーリー・マクレーンの底力。
後半しか出ていないのにね〜。by K. Hattori

 ローズとマギーの姉妹は、見た目も性格も正反対だ。女性らしい色気や美しさには欠けるものの、子供の頃からの努力家で学校の成績もよく、今は弁護士として働いているローズ。妹のマギーは美しい容姿に恵まれているが、勉強はまるでだめで、定職にも就かずにふらふらしている。しかも気に入った男をみれば、見境なくすぐに寝てしまう尻軽女。ローズはそんな妹に呆れ、嫌悪しながら、それでもたったひとりの妹を見捨てられない。だが実家を追い出されたマギーがローズのささやかな幸せをメチャメチャに壊した時、ついにローズは妹を自分の生活から締め出すことを決めた。マギーは実家で見つけた古い手紙の束から、自分の祖母が健在なのを知り、彼女を訪ねてみることにしたのだが……。

 賢い兄と出来の悪い弟の葛藤を描いた『エデンの東』の女性版のような作品。姉妹に母親がいないというのも共通しているし、死んだと聞かされていた肉親の存在に妹の方が気づき、それに会いに行くというのも『エデンの東』と似ている。ただし『エデンの東』と違って、『イン・ハー・シューズ』は最後に家族の和解というハッピーエンドを迎える。出来の悪い弟に大いに肩入れしていた『エデンの東』と違って、姉妹の双方をほぼ平等に扱っているのも『イン・ハー・シューズ』の特徴だ。『エデンの東』に登場する優等生の兄に共感する人はあまりいないと思うが、『イン・ハー・シューズ』の姉ローズに共感する人は大いに違いない。

 祖母を訪ねてフロリダに行ったマギーが、そこで人間的に大きく成長していく様子が物語の中心になる。マギーを演じるのはキャメロン・ディアスで、祖母のエラを演じるのは大ベテランのシャーリー・マクレーン。季節をあまり感じさせないフロリダの風景と対比させて、都会暮らしをしているローズの生活変化を丁寧に描いているのが上手いところ。ローズ役のトニ・コレットの好演もあって、この堅物の姉がじつに共感の持てる人物になっているのだ。

 登場する人物たちは、誰もが欠点を持っている。過去に対する負い目や、自分自身に対する嫌悪にも似たコンプレックスがある。世の中には誰も完璧な人間などいないのだ。ローズには容姿や自分自身の性格に対するコンプレックスがあり、それが彼女の部屋のクローゼットの中にある大量の靴という形で象徴されている。マギーのコンプレックスは難読症に代表される自分の頭の悪さだ。エラは孫を見捨ててしまった過去の負い目があり、姉妹の父は気の強い後妻に頭が上がらない。ここには誰も悪人がいない。みんなが少しずつ弱い部分を持っているだけだ。しかしその弱さが、周囲の人々を傷つけてしまう。

 多彩な登場人物がそれぞれに自己主張して、エピソードは四方八方に広がっていく。しかしそれらをまとめ、映画にひとつの統一した色調を生み出しているのは、シャーリー・マクレーンではないだろうか。

(原題:In her shoes)

11月12日公開 有楽座ほか全国東宝洋画系
配給:20世紀フォックス
2005年|2時間11分|アメリカ|カラー|1:2.35|DTS、Dolby Digital、SDDS
関連ホームページ:http://www.foxjapan.com/movies/inhershoes/
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