Mr. & Mrs. スミス

2005/12/07 錦糸町シネマ8楽天地(シネマ7)
互いに素性を伏せて結婚した殺し屋夫婦の愛の行方。
単に騒々しいだけの映画だな〜。by K. Hattori

 スミス夫妻は結婚5〜6年目を迎える幸せな夫婦。しかしふたりは互いに、自分たちの本当の姿を相手には知らせていなかった。じつはこのふたり、別々の組織に所属する凄腕の殺し屋なのだ。互いの正体を知らぬふたりは、それぞれの組織から同じターゲットを消す依頼を受けたことがきっかけで、自分にとってもっとも親しい人間が、最大のライバルであり敵であることを知ってしまう。「正体を知られた相手は消せ!」がこの商売の鉄則だ。ふたりは戸惑いと疑心暗鬼の中で、互いに相手を殺そうとするのだが……。

 ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー主演のアクション・コメディ映画。凄腕の殺し屋が配偶者に正体を隠して暮らしているという設定はジェームズ・キャメロンの『トゥルーライズ』みたいだし、夫婦喧嘩が殺し合いになるという設定は『ローズ家の結婚』みたいな感じ。でもIMDbを見たら、これは『女と男の名誉』のリメイクだと書いてあった。ふ〜ん、なるほど、確かに設定はそうだよな……。(タイトルはヒッチコックの『スミス夫妻』と同じだけど……。)

 いずれにせよ話のアイデアとしてはそれほど奇抜でも新鮮でもないのだから、あとはこの設定を土台にしてどこまで徹底的に悪ふざけをするかが映画の見せ場になるはず。ところがこの映画では、そのオフザケが足りないのだ。馬鹿げた設定なんだからもっと馬鹿馬鹿しさを突き詰めていけばよさそうなものを、この映画は話があちこちで停滞し、展開が萎縮しているように感じる。「夫婦がじつは共に殺し屋でした」という設定は、映画を観る前から観客の誰もが知っていること。あとはその異様な前提から、いったいどんなことが起きるのかを観客は楽しみにしているのだ。それなのにこの映画は、そんな観客の期待に十分応えていると言えるのだろうか? 観客が想像し、期待し、予測していたことを、いい意味で裏切っているだろうか?

 映画の中にはいろいろなアイデアの種が散りばめられている。若い美女ばかりのハイテク殺し屋組織は新鮮だったし、ブラピの相棒を演じるヴィンス・ヴォーンが母親とふたり暮らしをしていて、この母親の声は聞こえるのに姿を見せないというのは『サイコ』のパロディだろうか。他にも細々としたお遊びやアイデアが数多く見られるのだが、それがエピソードとして大きく展開していかないのは残念。

 ところで映画の最後、これで主人公たちは「勝った」ことになるのか? 両組織のトップを潰して自分たちが後釜に座るか、はたまた殺しや稼業から足を洗って正業に就くか、もしくは両組織の不和を解消して和解させない限り、問題は解決しないのではないか。僕は両組織のトップもじつは元夫婦で、主人公たちの仲直りに合せて両トップも元の鞘に収まりハッピーエンド……というオチを予想したんだけど。まあ退屈はしないので、これはこれでいいのかな。

(原題:Mr. & Mrs. Smith)

12月3日公開 日比谷スカラ座、日劇1ほか全国東宝洋画系
配給:東宝東和
2005年|2時間|アメリカ|カラー|ドルビー
関連ホームページ:http://www.mr-and-mrs-smith.com/
ホームページ
ホームページへ