ダイヤモンド・イン・パラダイス

2005/12/10 GAGA試写室
凄腕の宝石泥棒カップルが引退を決意するのだが……。
最後のどんでん返しにニヤリ!by K. Hattori

 宝石専門の大泥棒マックスはこれで最後と決めた大仕事を成功させ、相棒で恋人でもあるローラと南の島で悠々自適の引退生活。だがそこに、マックスには何度も煮え湯を飲まされたFBI捜査官スタンが現れた。近々島にやってくる豪華客船には、高価な巨大ダイヤが展示されている。マックスはそのダイヤ目当てに、島に長逗留しているに違いない! スタンは島の美人刑事ソフィーと組んで、マックスを張り込むことにする。同じ頃、島の裏社会を仕切るアメリカ人ヘンリーもマックスに接触する。彼はマックスを使って、ダイヤを手に入れようとしているのだ。結婚と平穏な暮らしを願うローラは、マックスが昔の稼業に戻ろうとするのをなんとか止めたいと考えるのだが……。

 泥棒と警官の駆け引きにギャングがからみ、そこに泥棒コンビと刑事同士のロマンスがプラスされたサスペンス・コメディ。劇中でヒッチコックの『泥棒成金』が引用されるが、リゾート地に現れた宝石泥棒に美女がからむという設定は本作と共通。作り手はこの映画で、『泥棒成金』と同じような路線を狙っているのだろう。『泥棒成金』よりも少し手が込んで、大がかりな盗みのシーンは冒頭とクライマックスに2回、ロマンスは2組、そしてセックス描写や下ネタ系のギャグをちらほらとまぶし、流血も少々あり、美女はラテン系と黒人になっている。華麗な犯行も映画の見どころのひとつだが、それより面白いのは登場人物同士のテンポのいい会話や、表情ひとつ変えずに相手を挑発したり出し抜いたりする丁々発止のやりとりにある。これは「ルパン三世」におけるルパンと銭形のやりとりみたいなものだ。

 主演のピアーズ・ブロスナンは007役者として一躍メジャーになった後、自分の製作会社で泥棒映画の古典『華麗なる賭け』のリメイク『トーマス・クラウン・アフェアー』を作って主演したぐらいだから、もともとこの手の映画が好きなのでしょう。『トーマス・クラウン・アフェアー』は続編も作るらしいけれど、案外それはこの『ダイヤモンド・イン・パラダイス』で泥棒映画の面白さに再び目覚めてしまった結果かもしれない……。女王陛下に命懸けのご奉公を続けるジェームズ・ボンドより、一匹狼の大泥棒の方がずっとブロスナンには似合っている。アイルランド人がボンドを演じているというのも、ブロスナンにとっては心中複雑だったのかもしれない。この映画ではイギリス人と言われた主人公が、即座に「アイルランド人だ」と言い返す場面があるが、なんだかボンドを演じているときより、こっちの方が自然だし伸び伸びしている感じだ。

 スタンを演じたウディ・ハレルソンもいい調子だし、ヘンリー役のドン・チードルも腹に一物ある男を好演。ナオミ・ハリス演じるソフィーの気の強さもいい。でも欲を言えば、サルマ・ハエック演じるローラにもう少し押しの強さが欲しかった。それだけがちょっと残念。

(原題:After the sunset)

2006年陽春公開予定 丸の内ピカデリー2ほか全国松竹東急系
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
2003年|1時間38分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|ドルビーSR、ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.diamondparadise.jp/
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