キスキス,バンバン

2006/03/08 ワーナー映画試写室
『リーサル・ウェポン』シリーズの脚本家が監督デビュー。
趣向を凝らした楽しい映画だ。by K. Hattori

 NYのケチな泥棒ハリー・ロックハートは、警官に追われてたまたま飛び込んだ俳優オーディション会場でその「リアルな演技」が評価され、ハリウッドの映画界に俳優として招かれる。探偵役のオファーを受けいてる彼に探偵業の実地コーチをするのは、強面だがゲイという噂のある私立探偵ペリー・バン・シュライク。ふたりはある人物の見張りという地味な仕事に取りかかるが、そこでいきなり殺人事件の現場に遭遇してしまう。殺されたのは若い女。ハリーとペリーはこの事件をきっかけに、厄介な陰謀に巻き込まれてしまう……。

 『リーサル・ウェポン』シリーズの脚本家、シェーン・ブラックの初監督作品。『リーサル・ウェポン』シリーズ同様、強烈な個性を持った主人公たちが物語を引っ張りながら、笑いの要素もたっぷり詰め込まれたアクション映画になっている。ハリウッドの困ったちゃん俳優ロバート・ダウニーJr.が、映画の中でもやっぱりイロイロと困ったことをやらかす主人公を好演。ハードな役の多いヴァル・キルマーが、その相棒としてハードなゲイ探偵をのびのび演じているのも見物だ。このコンビに絡むのが、最近めきめき売り出し中のミシェル・モナハン。おそらくこの映画は、彼女の出世作になるに違いない。

 ブラック監督が脚本を書いた『リーサル・ウェポン』シリーズは、最初シリアスでハードな刑事アクションドラマとして始まり、それが徐々におちゃらけムードのコミック映画になっていった。これは結局、そうした映画を観客が求めていたからに他ならない。この『キスキス,バンバン』はそうした観客側の嗜好を踏まえて、最初からコミカルなキャラクター、コミカルなエピソード、コミカルな場面で構成されているのが楽しい。お色気シーンも多いのだが、それがサッパリと淡白なタッチで描かれているのもいい。

 謎解きミステリーとしては話の展開にわかりにくさもあるし、アクション映画としては小粒なのだが、そうした部分が特に弱点にはなっていない。これはキャラクターの面白さで観客を楽しませる映画なので、謎解きの真相は大げさにならない方がいいし、アクションが映画全体の目玉になるような構成も似つかわしくない。この映画が目指すのは、観客に主人公たちを好きになってもらうこと。その点この映画は、十分に狙いに成功していると思う。

 映画監督デビュー作という気負いもあるのだろうが、映画前半では語りの創意工夫がいささかうるさく感じられる。フィルムを逆転させたり、コマとコマの間にあるフレームを見せるあたりは、ちょっと作為が目立ってうっとうしいほどだ。映画中盤からはこうしたトリッキーな演出もなくなるので、たぶんこの映画では、導入部にいろいろと趣向を凝らしておこうと、注ぎ込めそうなアイデアを全部突っ込んだのだろう。確かにうっとうしいのだが、そのガムシャラさには好感を持つ。ブラック監督の次回作にも期待だ!

(原題:Kiss Kiss Bang Bang)

4月8日公開予定 TOHO CINEMAS六本木ヒルズ
配給:ワーナー・ブラザース映画
2005年|1時間43分|アメリカ|カラー|シネマスコープサイズ|SRD、DTS、SDDS
関連ホームページ:http://www.kissbang.net/
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