迷い婚

2006/05/09 ワーナー試写室
映画『卒業』のモデルになった家族の現在は?
脚本・役者・監督が揃った佳編。by K. Hattori

 1967年にダスティン・ホフマン主演で製作された映画『卒業』は、主人公ベンが結婚式から花嫁を奪うラストシーンで有名。主人公を誘惑するミセス・ロビンソンは、今でも年下の男を誘惑するセクシーな中年女性の代名詞となっている。ポール・サイモンが担当したサントラも大ヒット。アメリカン・ニューシネマを代表する作品であると同時に、誰もが一度は観る青春映画の古典となっている。映画はチャールズ・ウェブの同名小説が原作だが、じつはこの小説や映画にはモデルとなる実話があったとの噂が……。

 本作『迷い婚』は、映画『卒業』の続編と言えそうな作品だ。映画『卒業』の大ヒットから30年後の1997年。ニューヨークの新聞社に勤めるサラは、妹の結婚式に出席するため故郷パサデナを訪問した際、自分の家族こそが映画『卒業』のモデルだったことを知る。亡くなった母は父と結婚する1週間前に元恋人と駆け落ちし、その後何事もなかったように父と結婚したのだという。その元恋人は、なんと母の母、つまり祖母とも関係を持っていた! 祖母は映画でアン・バンクロフトが演じたミセス・ロビンソンで、母はキャサリン・ロス扮するエレンだったのだ!! 自分が両親の結婚から時間を置かず誕生していることから、サラは母を連れ去った元恋人こそ自分の本当の父ではないかと考える。ダスティン・ホフマン扮するベンジャミン・ブラドック(のモデルになった人物)こそ、自分の本当の父親なのではないか??

 ジェニファー・アニストン演ずるヒロインのサラは、弁護士のジェフという申し分のない婚約者がいるのに、心の中で彼との結婚にブレーキをかけている。その理由を探す旅というのが、一応のこの映画のテーマだろう。しかしこの「自分さがしの旅」は、ちょっと焦点がぼけている。彼女がなぜ結婚に踏み切れないのか、その理由が最後までよくわからないのだ。家族の秘密や自分の出生の秘密を探るという話は、彼女が妹の結婚式に出席してから出てきたこと。彼女はそれ以前から結婚に対してグズグズした態度を取っていたのだから、この真相探しの旅は、むしろ結婚話から逃げるための彼女の言い訳ではないのか。

 こうして「彼女はなぜ結婚したくないのか?」という最初の振り出しに戻るわけだが、案外こうした「恋人には満足だけど、結婚はちょっと」という心理は、あれこれ説明せずとも世の中の女性たちに共感できるものなのかもしれない。恋人はいるし、同棲もしているし、結婚も考えている。でもいざ結婚となるとなかなか踏み出せない……という人は、たぶん世の中にゴマンといるに違いない。たぶんそれらのカップルも、男の方は結婚する気まんまんなのに、女性の方がその気じゃなかったりすることが多いのではないだろうか。(これは個人的体験を前提とした話だなあ。)この映画は「恋人以上、結婚未満」の現代カップルをうまく描いているように思う。

(原題:Rumor Has It...)

5月27日公開予定 T・ジョイ大泉ほか全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
2005年|1時間37分|アメリカ|カラー|ビスタビジョン・サイズ|SRD、DTS、SDDS
関連ホームページ:http://www.mayoikon.com/
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