LIMIT OF LOVE 海猿

2006/05/16 TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン2)
日本映画には珍しいスペクタクル・アクション映画。
テーマがストレートで感動した。by K. Hattori

 人気コミックを映画化した『海猿 ウミザル』(04)と、その続編とも言えるテレビシリーズ『海猿 UMIZARU EVOLUTION』(05)に続く映画第2弾。僕は前作映画もテレビ版も観ていないのだが、劇場で大ヒットしているようなので観てきた。作りとしては劇場版の『踊る大捜査線』シリーズやそのスピンオフに似ているのだが、これは製作スタッフがほぼ同じなのだから当然か。こうした映画には過去のシリーズの同窓会のような面があるのだが、そうした予備知識なしでもちゃんと楽しめる内容になっているのはさすがだ。スタッフも出演者たちも自分たちの役割が身体に染みついているようで、特に伊藤英明・加藤あい・佐藤隆太・時任三郎らの主演クラスは、台詞以外の部分で役柄を膨らませて説得力を増している部分がずいぶんあったように思う。

 鹿児島港沖でフェリーが砂利運搬船と接触する事故が発生。フェリーの損傷は思った以上に大きく、ゆっくりと沈没し始める。600名以上の乗員乗客をほぼ下船させた頃、内部では火災が発生。火と煙に巻かれた海上保安官の仙崎と吉岡は、乗客2名と共に船内に閉じ込められてしまう。仙崎は必死に脱出ルートを探すのだが……。

 映画は『ポセイドン・アドベンチャー』と『タワーリング・インフェルノ』に『タイタニック』を加えたような、大がかりで本格的な災害スペクタクル・アクションになっている。事故を起こした船が岸からすぐ近くに見えているのに、周囲からはまったく手出しできないという状況設定がサスペンスを盛り上げる。映画のテーマは明確だ。そもは「希望」。最後の最後まで諦めないギリギリの努力の末に、未来が開けるという単純ながら力強いメッセージ。その象徴が、乗客のひとりが身籠もっている赤ん坊だろう。映画のクライマックスでは、「まだ諦めていないやつらがいる!」という声が力強く響く。諦めさえしなければ、そこに必ず道が開けるのだ。

 だが未来を信じて諦めずに戦い続けるのは、ひとりの人間の力だけではできない。そこにはいざとなったら命懸けで助けてくれる、信頼できる仲間たちが必要なのだ。誰かを「信じ続ける」ことも、この映画のテーマになる。脱出ルートを探す仙崎を、じっと待ち続ける吉岡と乗客。「仙崎さんは絶対に戻ってきます」と言い切る吉岡の表情がいい。このシーンがあるからこそ、そのあと仙崎が「絶対に戻ってくるからな!」というシーンが生きてるし、仙崎の恋人が「彼は戻ると約束しました」と仙崎の生存を確信するシーンにもつながってくる。

 映画冒頭の救助シーンが、なぜ仙崎の結婚躊躇につながるのかわかりにくい。ウェディングドレスの象徴性も、うまく機能していないように思える。船は傾いているのに船内は傾かないなど(最後の梯子はまっすぐ上に伸びている)、辻褄の合わない場面もある。だがそうした欠点を差し引いても、この映画は面白いし感動的だ。

5月6日公開 日劇2ほか全国東宝系
配給:東宝
2005年|1時間57分|日本|カラー|シネマスコープ
関連ホームページ:http://www.umizaru.jp/
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