スーパーマン リターンズ

2006/07/06 新宿ミラノ1
ブライアン・シンガーが監督したまったく新しい古典。
健全なヒーロー。それがスーパーマン。by K. Hattori

 スーパーマンのデビューは1938年だというから、今から68年も前のことだ。最初の映像化作品は、1941年に作られたフライシャー兄弟のアニメーション。それ以来何度も映画やテレビになったスーパーマンだが、本格的な映画作品は1987年の『スーパーマン4/最強の敵』が最後。その後ハリウッドではアメコミヒーローの実写映画化が相次ぎ、バットマン、スパイダーマン、ハルク、X−メン、ファンタスティック・フォーなど、主要なヒーローたちが次々と最新技術で映画化されていった。しかしスーパーマンだけは、なぜか再映画化が実現しなかった。『バットマン』のティム・バートンが映画化を熱望していたがその企画はいつのまにか流れ、今回『X−メン』のブライアン・シンガー監督が新作を手がけることとなったのだ。

 キャスティングは一新されたが、映画の世界観としては1978年の『スーパーマン』と81年の続編『スーパーマン II/冒険篇』を踏まえたものになっているという。25年ぶりの続編ということだが、物語の中では5年しか時間が経っていない。もっとも話はあちこちで、これらの前シリーズから直接つながっているような、直接はつながっていないような不思議な具合だ。もっともスーパーマンに限らずアメコミというもの自体が、全体としてはこうしたパラレルワールドを構成しているわけだけれど……。

 物語は相変わらずスーパーマンと宿敵レックス・ルーサーの戦いを描いているのだが、それより今回の大きなテーマになっているのは、「現代人にスーパーマンは必要か?」ということだろう。人々はスーパーマンなしでも、十分に安全で快適な生活を楽しんでいる。スーパーマンがいればいたで便利だが、その活躍はひょっとするとスーパーマンひとりの自己満足かもしれない。スーパーマンがいたからとて、地球上からすべての犯罪がなくなるわけではないし、すべての災害から人々を守れるわけじゃない。スーパーマンが留守の間に、ロイスは「スーパーマンはなぜ必要ないのか」という記事を書いて、ピュリッツァー賞を受賞している。この一事が、この映画におけるスーパーマンの立場を象徴しているのだ。

 しかしそれでも、人々にスーパーマンはやっぱり必要なのだ! それが今回の映画のメッセージだ。わかる人にはすぐわかるだろうが、この映画のスーパーマンは救世主イエス・キリストの別バージョンだ。ふたりの共通点は多い。映画の中ではスーパーマンが「救世主」と呼ばれている。養父を亡くしているが養母は存命している。不思議な超能力で人々を救う。何よりもこの映画の中では、キリストの受難劇をスーパーマンがそっくりそのままなぞるのだ。彼は死を決意して敵との決戦に挑み、自らの十字架を背負い、一度死ぬが復活し、天に昇り、今も人々を見守り続ける。他にも聖書からの引用は多数。今度の映画はまるで聖書物語だ。

(原題:Superman Returns)

8月19日公開予定 丸の内ルーブルほか全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
2006年|2時間34分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|SRD、DTS、SDDS
関連ホームページ:http://wwws.warnerbros.co.jp/supermanreturns/
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