家門の危機

2006/10/18 メディアボックス試写室
ヤクザの跡取り息子とエリート女性検事が恋に落ちる。
韓国で大ヒットしたラブ・コメディ。by K. Hattori

 韓国の全羅南道に拠点を置くヤクザ組織・白虎組は、先代の女ボスから3人の息子たちに代替わりして組織は磐石。しかし問題は、新しいボスである長男のインジェがいまだ独身で、女性関係の浮いた話がまったくないことだった。若いころに恋人を事故で失ったトラウマが、今もなお彼を苦しめていたのだ。ところがある日、インジェはライバル組織の斧組に追われる美しい女性ジンギョンを助け、一目で恋に落ちてしまった。彼女は死んだ元恋人に瓜二つの美女。彼女も自分を助けてくれたインジェに恋をする。だがジンギョンの職業は、組織犯罪担当のエリート検事。ふたりは決して結ばれない、現代のロミオとジュリエットなのだ!

 韓国で大ヒットしたラブ・コメディとのことで、もともとは3年前に製作された『大変な結婚』(原題は『家門の栄光』)と同一コンセプトのシリーズ第2弾として作られた映画だ。『大変な結婚』では男が若きエリート・ビジネスマンで、女性がヤクザの娘だった。『家門の危機』はそれをひっくり返して、男性をヤクザ、女性をエリート検事にしたわけだ。ふたつの映画はアイデアの根本は同じだが、話自体は特につながっていない。しかし『家門の危機』が大ヒットしたことで、同じスタッフとキャストで続編『家門の復活』が作られている。要するに、今回の映画はそれだけヒットしたということだ。

 ただしこの映画、僕はあまり面白いと思わなかった。細かなギャグではところどころに笑ってしまうものもなくはない。しかし物語の骨組みにバランスの悪さがあって、それをギャグで誤魔化しているだけのような気がするのだ。

 主人公の男女は互いの立場の違いから交際や結婚が難しくなるわけだが、そもそもこの設定の根本的な部分に、この映画の欠陥があるように思う。インジェの問題は、彼がヤクザの幹部であることだ。彼が愛したジンギョンは、ヤクザを取り締まる検察官。ここにふたりの、職業上の相剋と葛藤が生まれる。ヤクザは社会の悪である。検事は悪を取り締まる正義である。しかしこの映画はラブコメだ。ヤクザの男やその家族は、ヤクザではあっても好人物でなければならない。そのためこの映画では、インジェのヤクザ稼業の中身についてはまったく触れられていない。

 そもそも白虎組のシノギはなんなんだ? 麻薬か、賭博か、売春か、武器密売か? ヤクザが暴れ回るのはそうした非合法なシノギを巡る利権争いのためであり、暴力そのものが目的ではないはず。しかしこの映画ではその点がぼかされている。かわって持ち出されているのが、家族の関係だ。男の側が家族を持ち出すなら、女の側も家族を持ち出さないと話はかみ合わない。しかしこの映画では、検事の側はそのまま職業上の都合で話を進めてしまう。これでは「結婚できないワケ」が永久にかみ合わず、空回りしてしまうではないか。せめてギャグがもっと面白ければなあ……。

(英題:Marrying the Mafia II)

11月公開予定 シネマート六本木
配給:リベロ
2005年|1時間55分|韓国|カラー|ヴィスタ|ドルビー
関連ホームページ:http://www.kamon-kiki.jp/
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