DEATH NOTE

the Last name

2006/10/23 ワーナー試写室
金子修介監督の少女趣味が炸裂するシリーズ完結編。
天才同士の勝負の行方はどこに? by K. Hattori

 人気コミックを映画化した『DEATH NOTE』の完結編。キラ捜索に協力するLに接近するため、恋人すら殺して捜査本部入りの切符を手に入れた夜神月(やがみライト)。だがLの本名がわからず、周囲の監視の目も多いことから、ライトはデスノートを封印せざるを得ない。そこに1作目では申し訳程度に顔を出していたミサミサこと弥海砂(あまねミサ)が、別の死神から新しいデスノートを手に入れて「第2のキラ」となる。はたしてミサはライトにとって、信頼できる味方になるのか? 互いに顔を知らないふたりは、どうやって接触しようというのか? 警察とLの捜査網が徐々に狭まっていく中で、ライトは彼らを出し抜き、宿敵Lを倒すことができるのか?

 1作目に比べると、ライトとLの対決姿勢はより鮮明になっている。何しろライトは隙あらばLを殺そうと手ぐすね引いているのだし、Lもライトがキラだと確信していて、自分が命を狙われていることを十分に自覚しているのだ。互いに顔と顔を付き合わせたまま、ライトがしっぽを出すか、Lが何か重大なヘマをするか、互いが互いを虎視眈々とにらみ付けている。しかし互いが天才同士だからそうそう小さなミスさえ生じるはずもなく、事態は完全な膠着状態。そこにミサという第三の主役をからめて、物語を強引に攪拌していくことになるわけだ。

 物語の焦点がライトとLの直接対決に移行したことで、「法で裁けない犯罪者をデスノートが処刑する」というライトの当初の目的はボケていく。目的は犯罪者の処刑からL個人の抹殺へと移行し、デスノートを使った犯罪者の処刑は、Lや警察の目をくらます煙幕になってしまうのだ。目的と手段が入れ代わり、歪んだ正義だけが暴走していく。自分を追跡するFBI捜査官を殺し、恋人を殺してもなお、ライトは自分を正義だと考えている。彼は第2のデスノートで警官を殺したミサに、偉そうに説教してみせるのだ。先に警官を殺し、罪もない人を手にかけたのはライトではないか。なんという滑稽さ! しかしライトは、そうした自分自身の矛盾に気づいていない。

 ライトが人間味を失いながらLとの戦いに没入していく中で、この映画を引っ張っていくのはミサだ。彼女にノートを渡す死神も、ライトやLよりよほど人間臭い。少女趣味の金子修介監督は、ミサ周辺のエピソードになるとドラマの演出に艶が出る。テレビ局内での女の戦いも強烈。(独り暮らしの独身女性の部屋を何台ものカメラで盗撮しているのに、その映像からまったく色気を感じさせないというのもある意味スゴイ。)

 ライトとLの戦いにストーリーはあるが、そこには人間同士の衝突から生まれるドラマがない。ふたりは互いの命を担保にして、プライドを賭けたチェスゲームに興じているに過ぎない。この映画を盛り上げるのは、ミサの愚かで一途な感情のほとばしり。今回の映画はラブストーリーなのだ。

11月3日公開予定 丸の内プラゼールほか全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
2006年|2時間20分|日本|カラー|ビスタサイズ|SR、SRD
関連ホームページ:http://www.death-note-movie.com/
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