カンバセーションズ

2006/11/15 松竹試写室
昔別れた彼女(彼氏)に結婚披露パーティでばったり再開。
さ〜て、その後ふたりはどうなった? by K. Hattori

 結婚披露パーティーで十数年ぶりに再会した男と女。ふたりは若い頃、きわめて親しい関係にあった。だが離ればなれの時間の中で、女は海外に移住して結婚し、男も若く美しい恋人と一緒に暮らしている。近況報告と気持ちの探り合い。ふたりの気持ちは接近し、その夜は女の泊まる部屋でベッドを共にすることになるのだが……。主演はヘレナ・ボナム=カーターとアーロン・エッカート。映画のほとんどがふたりの台詞でぎっしり埋め尽くされていて、まるで舞台のふたり芝居を観ているような雰囲気。刻々と変化していく状況に合わせて、男女が互いに腹を探るような会話が飛び交う様子はかなりスリリング。しかしこの映画を特徴づけているのは、そうした台詞や芝居以外の部分にもある。それは横長のシネマスコープ画面を左右に二等分し、それぞれに異なった映像を映し出す「デュアル・フレーム」の採用だ。

 映画は最初から最後まで、画面の右と左に異なった視点、異なった時間の映像を配置する。一方に男が、もう一方に女が配置されることもあるし、一方に現在の主人公たち、もう一方に十数年前知り合ったばかりの頃の主人公たちが配置されることもある。時間をずらして同じシーンを再現したり、現実の時間では存在し得ない別テイクの会話シーンが併走する場合もある。あるいは当時に複数の場所で起きている出来事を、画面の左右で並べてみせることもある。縦横無尽、自由自在に、ふたつのフレームは物語を切り取り、切り刻み、解体し、並べ替え、再び結合させる。

 映画の肝が編集にあるとすれば、この映画は画面をふたつ同時進行させることで、編集の複雑さが否応なしに増していく。映画の編集は通常、時間的に前後する複数のカットをどう並べていくかが問われるわけだが、この映画では画面の左右にどのような絵を並べていくかで、そのシーンの意味合いが大きく変化していくのだ。同じ時間と空間の中で、複数の異なった映像を対比させるというのは、映画ではなく組写真の手法だ。しかしその組写真でも、雑誌掲載などではページの構成によって緩やかな時間の流れを作り出すことができるし、写真の大小や見出し、キャプションなどで読者の視線をある程度はコントロールすることができる。だがこの映画『カンバセーションズ』では、左右画面は均等分割。しかも時間は常に同時進行だから、観客が左右どちらの画面に注目するかはその時の気分次第。

 劇中でもっとも編集が複雑になるのは、主人公たちのベッドシーン。ここでは若い頃のふたりのベッドシーンと現在のそれが交差し、時間は自由自在に伸び縮みしたり、切り貼りされたりする。おかげでこのシーンは、まったくエロチックでもロマンチックでもなければ、コミカルでも極端にシリアスでもない奇妙な味わいに仕上がっている。そしてこの時間交錯が生み出すほろ苦い感情が、この映画後半の基調になっていくのだ。

(原題:Conversations with Other Women)

2007年陽春公開予定 シネスイッチ銀座
配給:松竹 宣伝:ザジフィルムズ
2005年|1時間24分|アメリカ|カラー|シネスコサイズ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://conversations.cinemacafe.net/
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