13/ザメッティ

2007/01/25 メディアボックス試写室
一攫千金を夢見る男たちによるロシアン・ルーレット。
モノクロームの映像に身震いする。by K. Hattori

 グルジアから一家でフランスに移住してきたセバスチャンは、屋根の修理などわずかな賃仕事で一家の生活を支えている。そんなある日、彼は偶然1通の封筒を手に入れる。中に入っていたのはパリ行きの列車の切符とホテルの領収書。この封筒の元の持ち主はセバスチャンの雇い主だったが、封筒で大金が手に入ると言い残して急死。修理代も払ってもらえないのだから、この封筒を使って自分が金を手に入れたっていいんじゃないか? セバスチャンは指定された切符を使って列車に乗り込む。だがそんな彼を、警察の尾行がピッタリのとマークしていた。いったい封筒の差出人は、受取人に何を求めているのだろうか? セバスチャンがその本当の意味に気づいたときは、もはや逃げ道のない袋小路に追い込まれていた……。

 モノクローム、シネマスコープのスクリーンに映し出されるのは、血に飢え欲望に目をぎらぎらさせた男たちが繰り広げる、大規模なロシアン・ルーレット大会だ。集められたプレイヤーたちは手に1挺ずつの回転式拳銃を握らせられると、ぐるりと円陣を作って自分の目の前にいる男の後頭部に銃を突きつける。6連発拳銃で、入っている弾の数は1発、2発、時には4発……。シリンダーをよく回して撃鉄を引き起こし、円陣の中央にあるランプに明かりが付いたらトリガーを引く。このプレイヤーたちの周囲には、それぞれのプレイヤーの雇い主と、プレイヤーに大金を賭ける男たちがひしめく。これは人間の命を賭けた、世界でもっとも血なまぐさいギャンブルだ。はじめ10人以上いるプレイヤーたちの数は、1回のゲームごとに確実に減っていく。ここでは人間の命に対して、1銭の金も支払われることはない。ゲームの負けは死。その時プレイヤーは、生きていれば受け取れた高額な報酬を得る権利を失ってしまう。

 監督のゲラ・バブルアニはグルジア出身で、現在はフランス在住。この映画で主人公セバスチャンを演じているのは、彼の弟ギオルギ。監督自身も兄の役で映画に出演している。兄弟の父親はテムル・バブルアニという有名な映画監督らしい。この映画の中で主人公はグルジアからの貧しい移民という設定だが、実際の兄弟がそのまま兄弟を演じることも含め、ここにはバブルアニ一家の過去や現在が多く投影されているに違いない。家族のシーンや生活描写などはほとんど出てこないのだが、主人公から漂う生活者のリアリズム。働いても働いても決して社会の上層へと浮かび上がることができない青年が、得体の知れない1通の封筒に自分の人生を賭ける気持ちが嘘になっていない。

 ルーレットのシーンはすごい迫力。この高揚感があるからこそ、その後も恐怖が持続したまま虚脱状態で歩き回る主人公のエピソードが長く感じない。高ぶった気持ちをクールダウンさせるのに、この彷徨の時間が必要なのだ。青春映画、ギャンブル映画、犯罪映画としても水準以上。面白かった!

(原題:13 Tzameti)

4月公開予定 シネセゾン渋谷、テアトル梅田ほか
配給:エイベックス・エンタテインメント
宣伝:ライス タウン カンパニー
2005年|1時間33分|フランス|カラー|シネマスコープ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://13movie.jp/
DVD:13/ザメッティ
DVD (Amazon.com):13 Tzameti
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