恋しくて

2007/02/22 メディアボックス試写室
BEGINの名曲を使った青春音楽映画。モデルはBEGIN。
映画の最後に本人たちもゲスト出演。by K. Hattori

 BIGINのデビュー曲「恋しくて」をタイトルにした青春音楽映画。石垣島の高校生たちがバンドを組み、テレビのアマチュアバンド紹介番組出演をきっかけにプロデビューするというストーリーは、そのままBIGINをモデルにしている。原案はBIGINの最初の著書「さとうきび畑の風に乗って」。監督・脚本は『ナビィの恋』『ホテル・ハイビスカス』など、沖縄を舞台にした映画作りを続ける中江裕司。主人公たちが出演するバンド紹介番組の司会者として、BIGINデビューのきっかけとなった番組「平成名物TV・いかすバンド天国」(通称「イカ天」)の司会者だった三宅裕司がゲスト出演。映画の中で主人公たちが名乗るバンド名「ビギニング」は、メジャー・デビュー前のBIGINがイカ天・レーベルから発売した最初のアルバムのタイトルだ。映画の最後に「ビギニング」のメンバーがライブのステージでタイトル曲の「恋しくて」を演奏し終えると、同じステージにBIGINのメンバーが現れて、この映画の主題歌である新曲「ミーファイユー」を演奏するのも嬉しい。

 映画は主人公の栄順が高校に入学するところから始まり、幼なじみだった加那子との再会、加那子の兄・セイリョウに強引に引き込まれるように始まったバンド活動などの様子を、猛スピードで描いていく。何しろこの映画は、たった1時間39分の間に演奏シーンなどをたっぷりと盛り込み、それでいて主人公たちの高校3年間が終わってしまうのだ。即席バンドの結成から、学園祭での挫折を経て、高校生バンドのイベント成功、そして東京でのデビュー。話の流れはとんとん拍子で、まったくよどむところがない。ある意味、この手の青春ドラマのパターンをしっかりなぞっている。過去の青春映画の形式に、寄りかかりすぎるほど寄りかかっているとも言える。しかしストーリー自体が、この映画にとってはそもそも借り物なのだ。この映画が描こうとしているのは「音楽」そのものだ。「音楽の楽しさ」はもちろんのこと、聴く者を慄然とさせる「音楽の凄み」のようなものまでを、この映画はそれを生み出す沖縄の風土と共に描き出そうとしている。

 劇中には岩崎良美の「タッチ」やプリプリの「DIAMONDS」など'80年代のヒット曲はもちろん、山本リンダやピンキーとキラーズなどの懐メロ歌謡曲まで、数々の楽曲が引用されている。この音楽演奏シーンを観ているだけで、この映画は観ている人をひどく幸福な気持ちにさせてしまうはずだ。そして楽曲の極めつけは、セイリョウと加那子の母を演じた与世山澄子が、ピアノ1台のシンプルな伴奏で歌う「この素晴らしき世界(What a Wonderful World)」。映画のタイトルは「恋しくて」だし、映画の最後にはBIGINが主題歌の「ミーファイユー」を歌っているのだが、この映画を支配しているのは与世山澄子のジャズだ。しびれた!

4月14日公開予定 テアトル新宿
4月28日公開予定 銀座テアトルシネマほか全国ロードショー
配給:東京テアトル 宣伝:アルシネテラン
沖縄配給・宣伝:パナリ本舗
2007年|1時間39分|日本|カラー|アメリカンビスタ|ドルビーSR
関連ホームページ:http://koishikute2007.jp/
DVD:恋しくて
「恋しくて」オリジナル・サウンドトラック
主題歌CD:ミーファイユー(初回限定盤)(DVD付)(BEGIN)
主題歌CD:ミーファイユー(BEGIN)
原案:さとうきび畑の風に乗って(BEGIN)
関連CD:恋しくて(BEGIN)
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