彩恋 SAI-REN

2007/07/26 映画美学校第2試写室
卒業を間近に控えた女子高生たちの恋模様を爽やかに描く。
好きにならずにいられない映画。by K. Hattori

 仲良し女子高生3人組の青春模様を軽やかに描く、飯塚健監督・脚本の青春ドラマ。主人公の女子高生たちを演じる、関めぐみ、貫地谷しほり、徳永えりは、これまでにも様々な映画やドラマで活躍しているが、この映画の彼女たちはじつに輝いている。女子高生が主役の映画でこれほど楽しく観られたのは、原田眞人の『バウンス ko GALS』以来だと言っては褒めすぎか。作品の方向性がまったく違うのでどちらがいいとか悪いとか言うことはできないのだが、それぞれの時代の「今どきの女子高生」ときちんと向き合って、スクリーンの中に定着させようとしている作り手の姿勢は共通しているように思う。もっとも本作『彩恋』の女子高生たちはかなりマンガチックにデフォルメされていて、これがリアルな今どきの女子高生だとは思わないけれど……。

 この映画の面白さと楽しさは、登場人物全員が、力一杯前向きに生きているところから生まれている。全員がじつにポジティブなのだ。もちろんドラマというものは、登場人物たちの悩みや葛藤から生じるものだ。演劇であれ映画であれテレビドラマであれ、登場人物たちの悩みや葛藤の原因として、暗い話題や残酷な問題を取り上げることがしばしばある。ところがこの『彩恋』には、あまりネガティブな話題がない。途中に一箇所だけ「死」が取り上げられることがあるが、それ以外はすべて前向きな未来志向の悩みなのだ。

 ここでは誰も「昨日」の問題について悩まない。悩みはいつでも「明日」に関することだ。そして「明日」のことは誰にもわからない。だからこそ、この映画に登場する悩みや葛藤の多くに、映画を観る人もみんな共感することができる。「昨日」のことについてなら、人は後知恵でどんなことでも言える。でも「明日」を経験した人は誰もおらず、「明日」についてはっきりしたことが言える人は誰もいない。誰にとっても未知な「明日」に向かって勇気ある一歩を踏み出していく主人公たちを、映画を観ている側も応援したい気持ちになってしまうのだ。

 エピソードの中にはマンガチックなものも多数あり、「そんなことあるかよ〜」と苦笑いしてしまう場面も多い。その最たるものが、修学旅行で童貞を捨てる覚悟を決めた男子中学生の包茎剥き。制服のまま薬局でコンドームを買う度胸も大したものだが、銭湯で他の入浴客が大勢いる中で堂々と包茎を剥いてみせるのもエライ。いきなりセックスとペニスという即物的なエピソードから入ったこの少年の話が、最後に大純愛メロドラマになるのには参りました。

 場面ごとに音楽を大きく扱ってエピソードとの相乗効果を出しているのだが、それがうまくツボにはまって効果が出ているところもあるし、やりすぎて音楽がうるさく感じられるところもある。音楽の使い方は難しい。特筆すべきはロケーションで、千葉県銚子の風景が映画にじつにマッチしているのが好印象。

8月4日公開予定 新宿オスカー、渋谷シネ・アミューズ
配給:エム・エフボックス
2007年|1時間31分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.sai-ren.jp/
DVD:彩恋
ノベライズ:彩恋
コミック版:彩恋
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