ブルー・ブルー・ブルー

2008/04/04 SPE試写室
青春映画のいろんな要素をぶち込んだサーフィン映画。
欲張りすぎて少しまとまりが悪い。by K. Hattori

 オーストラリア東南の都市ニューキャッスルを舞台に、サーフィンに熱中する少年たちの姿を描いた青春群像劇。物語の中心になるのはジェシーという少年で、彼を中心にして様々な青春の悩みや夢にまつわるエピソードが散りばめられているという構成。家族との軋轢、未来への夢、恋愛と初体験、性についての悩みなど、各エピソードは定番のものばかり。そういう意味では、まず安心して観ていられる種類の映画なのだが、そこにほとんど新鮮味がないのも事実。こうした作品で作り手に問われるのは、各エピソードをどう構成して大きな物語にまとめるかという手際の良さだ。

 しかし残念ながら、この映画の脚本はあまりうまくできていないように思える。主人公ジェシーの物語が蛇行して、あまり一貫性がないのだ。ベースになるストーリーは、大きなサーフィン大会への出場を夢見ながら予選落ちに泣いた主人公が、代表選手に選ばれていた友人のケガをきっかけに大会に出場するチャンスを得るというもの。『四十二番街』など、ショウビジネスを舞台にしたバックステージものの定番設定を、サーフィン大会に置き換えたようなものだ。ところがこの映画、本来なら中心になるべきこのストーリーが弱い。主人公がいかにこの大会に賭けていたのかというウリも弱いし、予選落ちになったいきさつもわかりにくいのだ。その結果、他のエピソードが入り込むとこの中心線が平気でぶれてしまう。

 じつはこの映画にはもうひとつのストーリーラインがある。それは主人公の少年と、元花形サーフィン選手だった異母兄との確執だ。ケガをして選手を引退した兄は、結婚して子供もいるが現在は別居中。家に戻っている彼は、何かにつけて弟のジェシーに悪態をつく。ジェシーはこの暴君のような兄に反発しつつ、それでも彼のことが好きなのだ。家族だからこそ反発し、反発しながらも離れられない家族関係。主人公がこの兄といかにして和解するかが、この映画のひとつのクライマックスになっている。

 映画には他にも様々なエピソードが盛り込まれているのだが、残念ながらそれらがすべてバラバラな方向を向いていて、ひとつの映画の中でうまくまとまっていない。例えば主人公が友人たちと海辺のキャンプに行って、一夜を過ごすエピソードは面白い。これはこの映画の中で、もっとも魅力的なエピソードだと思う。しかしこれが映画本来のストーリーをせき止めて、話の方向性を余計な方向にねじ曲げてしまっているように思えてならない。それは具体的には、弟ファーガスと友人アンディの関係であったり、スコッティの屈折した気持ちであったり、ジェシーとデブラの関係が今後どうなっていくのかという期待感であったりする。登場人物たちの性格がよく表現されているエピソードだけに、こうしたシーンは映画の序盤で見せてほしかったと思う。そうすれば映画全体の印象も、より鮮明になっただろう。

(原題:Newcastle)

6月公開予定 シネセゾン渋谷
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2008年|1時間47分|オーストラリア|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタル、ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.blueblueblue.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ブルー・ブルー・ブルー
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