アイアンマン

2008/08/26 SPE試写室
マーベルコミックから飛び出したハイテク武装の新ヒーロー。
ロバート・ダウニーJr.がはまってる。by K. Hattori

Iron Man [Original Motion Picture Soundtrack]  アメリカ有数の軍需産業スターク・インダストリーの2代目若社長トニー・スタークは、会社経営者であると同時に同社が手掛ける兵器の開発も手掛ける天才発明家。だがいまだ紛争の治まらないアフガニスタンで武装組織に拉致されたトニーは、自社の兵器がゲリラたちに大量に流れていることにショックを受ける。平和のためにと信じて作った兵器が、世界中に新たな紛争を生み出しているのだ。ゲリラたちの基地から手製のパワードアーマーで脱出することに成功したトニーは、スターク社を兵器製造から撤退させると宣言。紛争地帯に散らばる自社の兵器を破壊するため、新たなパワードスーツを製作して現地に飛ぶ。アイアンマンの誕生だ!

 『スパイダーマン』や『X−メン』のマーベルコミックから、新たに生み出されたスーパーヒーローがアイアンマン。原作は1963年に初登場して、トニーが負傷する背景もベトナム戦争だったという。アイアンマンのユニークさは、主人公が大きな矛盾を抱え込んでいる点にある。トニー・スタークは武器を世界中に売りつける死の商人であり、同時に世界の平和を守るスーパーヒーローでもある。トニーの手から生み出された数々の武器や発明品が世界中で紛争や暴力を生み出し、トニーは自らその火消しに東奔西走しなければならない。

 こうした主人公の姿は、そのままアメリカという国のメタファーでもある。アメリカは正義と平和を愛しながら、一方で世界中に紛争を輸出している。アメリカは世界一の軍事大国であり、世界中で流通している武器の多くがアメリカ製で、それらはアメリカに対して敵対的な武装勢力の手にも渡っているだろう。その最たるものが核兵器だ。世界で初めて原爆を開発することに成功したのはアメリカ合衆国。しかし今ではそのアメリカが、自ら作り出すことに成功した核兵器に自らが攻撃される恐怖におびえている。

 トニーとアメリカの大きな違いは、トニーが自らの抱えた矛盾を否応なしに自覚せざるを得ないことだろう。その象徴が、拉致されたさい負傷した心臓を守る、超小型のアーク・リアクターだ。トニーはこの装置なしには生命を維持することができない。またこの装置は、巨大なパワーを必要とするパワードアーマーの動力源でもある。トニーは自ら作り出した技術によって命を長らえ、同じ技術によってスーパーヒーローとしての活動をしている。アイアンマンの活躍は、トニーが健康な心臓を失ったことの上に成り立っている。彼はもう二度と、健康な身体を取り戻すことはできない。しかし健康ではないからこそ、アイアンマンのスーパーパワーが存在するのだ。

 アイアンマンは明朗快活なアメリカンヒーローであって、湿っぽさは微塵も感じられない。しかしそのコンセプトは座頭市と同じ、身体に障害を持つスーパーヒーローなのだ。おそらく2作目以降で、この主人公が持つ矛盾や葛藤がより全面に押し出されてくることだろう。

(原題:Iron Man)

9月27日公開予定 日劇3ほか全国東宝洋画系
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2008年|2時間5分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|SDDS、SR*D、SR
関連ホームページ:http://www.sonypictures.jp/movies/ironman/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:アイアンマン
DVD (Amazon.com):Iron Man (Ultimate 2-Disc Edition) [Blu-ray]
DVD (Amazon.com):Iron Man (Two-Disc Special Collectors' Edition)
DVD (Amazon.com):Iron Man (Single-Disc Edition)
サントラCD:アイアンマン
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