1960年代から70年代にかけて量産された低予算のバイカー映画を、現代によみがえらせたアクション・バイオレンス映画。監督・脚本・製作・主演は、その時代に数々のバイク映画に出演していたラリー・ビショップ。『グラインドハウス』で70年代の低予算アクション映画を再現して見せたクエンティン・タランティーノが、ビショップに持ちかけて製作が実現した作品だという。ただし内容的には70年代のバイカー映画を現代流にリメイクしたと言うより、70年代の荒くれバイカー連中がそのまま年を取って現代もまだバイカーやってます……という映画になっている。
バイクとロックンロールは、かつて若者たちの反抗のシンボルだった。特にバイクや車は、若者たちの有り余るエネルギーを、さらに機械的に増幅してくれる能力拡張マシン! 若さからほとばしる反抗のエネルギーは、大排気量のエンジンが奏でる爆音のシンフォニーと共に荒野を激走したのだ。しかしこの映画ではオートバイが青年たちの反抗するエネルギーを増幅する装置になっているのではなく、かつての青年たちが寄る年波で衰えた自らの肉体と精神を鼓舞するためにオートバイを乗り回しているようにしか見えない。腹の突き出たオヤジたちが、精力剤とバイアグラの力を借りて若い女に挑み掛かっているような構図だ。
もちろんそれはそれで楽しげな光景ではある。二束三文の叩き売り商品のごとく粗製濫造されたバイカー映画の中で、唯一映画史に残る古典としての地位を手にしたのは『イージー・ライダー』だけ。その監督・主演だったデニス・ホッパーが、往年のバイカー役で登場するシーンにニヤニヤできない奴は映画ファンじゃない。そもそも映画の企画自体が「ラリー・ビショップ主演でもう一度バイカー映画を!」というものだから、この映画がオジサンたちの悪のりが過ぎる同窓会みたいになってしまうのは仕方ないし、むしろそれこそがこの映画の狙いと言えるのだ。
主人公のピストレロが、32年前に殺された女の復讐をなぜ今はじめなければならないのか。彼はこれまでの32年間、どこで何をしていたのか。そうした「なぜ」に合理的な説明は不要なのだ。32年前の物語はラリー・ビショップが今バイクに乗らなければならない、後付けの理屈に過ぎない。還暦ライダーのビショップが(1948年生まれだとか)、自分より年の若い、それでも不惑をとうに過ぎたマイケル・マドセン(1958年生まれの50歳!)や、劇中では40歳近い年齢に設定されているエリック・バルフォー(1977年生まれの31歳)を従えてバイクを突っ走らせる姿はかなり異様。しかしその異様さも、ヴィニー・ジョーンズの問答無用の悪役ぶりや、レオノア・ヴァレラの必要以上のお色気ビーム、デイヴィッド・キャラディンの貫禄と、ハリウッドの生ける伝説デニス・ホッパーのアクの強さで帳消しにされている。
(原題:Hell Ride)
DVD:ヘルライド
DVD (Amazon.com):Hell Ride DVD (Amazon.com):Hell Ride [Blu-ray] 関連DVD:ラリー・ビショップ監督 関連DVD:マイケル・マドセン 関連DVD:エリック・バルフォー 関連DVD:ヴィニー・ジョーンズ 関連DVD:レオノラ・ヴァレラ 関連DVD:デイヴィッド・キャラダイン 関連DVD:デニス・ホッパー |