三国志

2009/02/04 京橋テアトル試写室
アンディ・ラウが三国志の英雄・趙雲を演じるアクション大作。
見どころは多いがボリューム感に欠ける。by K. Hattori

Three Kingdoms: The Resurrection of the Dragon (First Print Edition) DVD  ジョン・ウーがトニー・レオンや金城武主演で「三国志」を映画化(『レッドクリフ』二部作)したら、それに対抗してアンディ・ラウ主演で三国志を映画化! 香港映画のこういう節操のないところが、ロジャー・コーマン的パチモン趣味でナントモなぁ……、などと甘く見ていたら、これが結構立派な歴史大作になっていてビックリ。プレス資料では中国映画になってますが、IMDbによれば中国・韓国・香港の合作映画とのこと。監督のダニエル・リーは香港出身。製作には香港と韓国のプロデューサーが参加。主演のアンディ・ラウや相棒役のサモ・ハンは香港出身だが最近は国際的な活躍を見せているし、共演のマギー・Q、アンディ・オン、ヴァネス・ウーらはアメリカ出身。結構ちゃっかりと、国際的なキャスティングになっていたりするのだ。

 「三国志」は2世紀末から3世紀にかけての中国史を壮大なスケールで描く大河ドラマで、そのすべてを映画化することなどとてもできない。そこでこの映画では、三国志の中でも準主役のさらにちょっと脇ぐらいの人物・趙雲を主役にしている。趙雲は「三国志演義」の主人公・劉備の部下で、関羽・張飛・諸葛孔明に続く4番目か5番目ぐらいの男だ。(『レッドクリフ』では中国人の俳優フー・ジュンが演じている。)長坂の戦いで曹操軍に追いつかれ捕らえられそうになった劉備の妻子を救出すべく、たった一人敵地に向けてきびすを返し、まだ乳飲み子だった劉備の嫡子を救い出したのが趙雲。こうした活躍から関羽や張飛と共に蜀の五虎大将軍のひとりとなった趙雲だが、他の将軍たちや主君の劉備が没した後に最後まで生き残ったのも趙雲だった。

 この映画ではそんな趙雲の晩年、最後の戦いとなる「鳳鳴山の戦い」をクライマックスにしている。ただしこの戦いの位置づけなどは「三国志演義」なども離れたオリジナルな展開となっているため、熱心な三国志ファンは「あれれ?」ということになるかもしれない。これは本作が「三国志」に取材しながら、趙雲というひとりの人物をより魅力的に描こうとしたことから生じたもの。原作となる「三国志」や「三国志演義」には、そもそもマギー・Qやサモ・ハンが登場する余地はないわけで、こうしたことも含めて、この映画は「三国志」の世界を映画的に膨らませたということだろう。

 膨大な数のエキストラを使った行軍シーンや合戦シーン、丁寧に作られたセットや衣装、サモ・ハンが演出した流麗なアクションシーン、豪華なキャスティングなど見どころは多い。しかしボリューム感に欠けるのだ。これは物語の前半で主人公の趙雲が将軍に出世した途端、「それから20年後」といきなり時間がとんでしまうことに原因があるのではないだろうか。主人公の人生にとってもっともドラマチックだったのは、おそらくこの「消えた20年」の中にあるように思えてならない。物語のプロローグとエピローグだけ見せられた気分だ。

(原題:三国之見龍卸甲 Three Kingdoms; The Resurrection Of The Dragon)

2月14日公開予定 シャンテシネ
配給:プレシディオ
2008年|1時間42分|中国|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.sangokushi-movie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:三国志
DVD (Amazon.dom):Three Kingdoms; The Resurrection Of The Dragon
関連DVD:ダニエル・リー監督
関連DVD:アンディ・ラウ
関連DVD:マギー・Q
関連DVD:サモ・ハン
関連DVD:ヴァネス・ウー
関連DVD:アンディ・オン
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