アンダーワールド

ビギンズ

2009/02/12 SPE試写室
ライカンの始祖ルシアンとヴァンパイア姫ソーニャの禁断の恋。
シリーズ最新作はシンプルで残酷な恋物語だ。by K. Hattori

Underworld: Rise of the Lycans  ケイト・ベッキンセールが吸血鬼一族の女ハンターを演じたダーク・ファンタジー映画『アンダーワールド』と『アンダーワールド:エボリューション』二部作に次ぐ、シリーズ最新の第3作目。今回は先行する二部作から時間をさかのぼり、ヴァンパイア一族とライカン一族の対立のルーツを描いていく。シリーズの続編だが時間的には過去を扱うというプリクエルだ。『スター・ウォーズ』の新三部作の成功以来、この手法はすっかり映画界に定着した。

 『アンダーワールド』二部作は、女戦士セリーンがいかにして一族の血にまつわる過去を乗り越えていくかという物語だった。そこで描かれているのは一族の歴史。数世紀にわたる長い血の連鎖や、長い年月の間に積み重ねられてきた愛憎と恩讐のしがらみだ。登場人物たちは「過去」と決別して自由に動き回ることができない。「過去」と向き合い、それを乗り越えていくことが、セリーンにとっての戦いでもあった。発想がすごく後ろ向きなのだ。しかし今回の映画は違う。ここには「過去」がない。一応この映画の前の歴史という物もあるのだが、登場人物たちがそれにがんじがらめになっているわけではない。彼らは今現在を起点にして、むしろ「未来」を生きようとしている。一族の血の確執というものは存在しても、それが自分たちのすべてを縛るものだとは見なしていない。今回の映画はシリーズの中ではもっとも前向きな展望を持つ作品であり、しかし主人公たちが夢見た明るい未来への展望が打ち砕かれ、その後の暗い歴史の原点になったという意味では悲劇的な映画でもあるのだ。

 今から数百年前。不死の王として周辺の人間たちを従え貢ぎ物を取り立てていたヴァンパイア族の長ビクターは、領内各地を荒らし回るウィリアムの一族(狼男)に悩まされていた。彼らは人間を襲うだけでなく、隙あらばヴァンパイア族たちの居城に侵入しようと様子をうかがっている。そんな折り、捕らえていたウィリアム一族の女が牢内で赤ん坊を出産する。その子供は他の狼男と異なり、自分の意思で狼と人間の姿に変身することができた。ビクターはこの赤ん坊にルシアンという名を付けて育て、時折生きた人間を咬ませては同様の仲間を増やして、日光の下では活動できない自分たちを守るための奴隷とした。しかしルシアンがたくましい青年に成長した頃、ビクターの娘ソーニャはルシアンと愛し合い逢瀬を重ねるようになっていた……。

 これは禁じられた恋に殉じる若い男女の悲恋物語であり、卑しい身分の青年が王女と身分違いの恋をする物語でもある。話としてはきわめて古典的。シンプルかつストレートで、盛り上げるべきところできちんとドラマを盛り上げてくれる。話として規定のレールをそのままなぞりすぎている部分も見られるのだが、それをダークでスタイリッシュな絵作りがカバーして、新鮮な物語に仕立て直している。個人的にはシリーズ中でも本作が一番楽しめた。

(原題:Underworld: Rise of the Lycans)

3月14日公開予定 TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2009年|1時間32分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|SDDS、DTS、ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.sonypictures.jp/movies/underworldriseofthelycans/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:アンダーワールド ビギンズ
サントラCD:Underworld: Rise of the Lycans
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