バットマン ビギンズ

2009/06/02 早稲田松竹
クリストファー・ノーラン監督の新生バットマン第1弾。
バットマン誕生のいきさつを描く。by K. Hattori

BATMAN BEGINS THE VISUAL GUIDE [バットマン ビギンズ ビジュアルガイド]  2005年の劇場公開時にも観ている映画だが、続編『ダークナイト』を観るのに合わせて再度鑑賞。2度目なので新鮮味はないが、細部はほどほどに忘れているので楽しめる。そして前回は感じなかった、新しい発見があったりもする。

 映画には大がかりなアクションシーンが何度も盛り込まれているが、内容はバットマンことブルース・ウェインの内面的な成長をたどる心の旅、自分探しの旅のような物語になっている。資産家で名士の両親を目の前でピストル強盗に殺されたブルースは、それがトラウマとなって自分の殻に閉じこもる。両親を殺した男への復讐を誓うブルースは、保釈された犯人がマフィアの手下に殺されて目標を見失う。悪を憎むとはどういうことなのか? 悪と戦うとはどういうことなのか? 自分は何を目標に生きていけばいいのか? 自分は何者なのか? 憎むべき悪の正体とは何なのか?

 これはひとりの少年が大人へと成長していく物語だ。彼の前には人生の手本となる人物が何人か現れる。事業を通してゴッサムシティを建て直そうとする父、トーマス・ウェイン。しかしそれだけでは暴力や腐敗に対抗することが出来ないことを、彼は自分の死を通して息子ブルースに教えることになる。第2の人物は街の腐敗を温床にして肥え太る、悪の首魁カーマイン・ファルコーニだ。しかしブルースは旅を通して、自分が決して悪そのものに染まりきることが出来ないことを思い知らされる。ファルコーニが言うように、彼とブルースとでは人種が違うのだ。悪は命がけで戦うべき相手だ。ではどうやって戦うか?

 ここでブルースの前には3人の人間が現れる。ひとりは法制度の枠内で悪と戦い抜こうとする、ブルースの幼なじみレイチェル・ドーズ。彼女はブルースの良心を代弁する人物でもある。もうひとりは腐敗し切った警察の中で、自らは決して汚職に手を染めることのない中年警官ジム・ゴードン。だが法を無視する犯罪者たちに対して、法の枠内でしか動けない彼らはあまりにも無力だ。悪と戦うには、悪に匹敵する力を自らが身に着けなければならない。その方法をブルースに教えようとするのが、悪に対抗する「影の同盟」の主催者ラーズ・アル・グールなのだ。世界は病んでいる。犯罪者たちは世界を蝕むガン細胞のようなものだ。ならばそれは容赦なく切り捨てなければならない。あらゆる悪を憎め。犯罪者に対して無慈悲になれ。そうすることで、犯罪者は震え上がる。犯罪者を恐れさせよ。恐怖を味方に付け、自分自身が恐怖そのものになるのだ。こうしてブルース・ウェインはバットマンになる。

 しかし「正義」は行き過ぎれば「暴力」になることを、ラーズ・アル・グールは示している。かといって「正義」が法の内部に留まっているだけでは無力だ。バットマンはその中道を行くわけだが、こうして見るとバットマンの立場というのは、最初からかなり危うい綱渡りの上に成立していることがわかる。

(原題:Batman Begins)

2005年6月18日公開 全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
2005年|2時間20分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|DTS、ドルビーデジタル、SDDS
関連ホームページ:http://www.jp.warnerbros.com/batmanbegins/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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