吸血少女対少女フランケン

2009/07/06 ポニー・キャニオン
個性はぞろいの都立高校で吸血少女と少女フランケンが対決。
少女フランケンには強烈なインパクトがある。by K. Hattori

Vampiregirl  東京タワー直下というわかりやすい立地にある都立東京高校で、女子生徒たちの誰もが認めるイケメン男と言えば水島樹権。毎年バレンタインデーには大量のチョコレートを受け取るのだが、その年は担任教師による持ち物検査でほとんどのチョコが没収の憂き目。唯一残ったのは、少し前に転校してきた有角もなみから手渡された、手作りの小さなチョコだけだった。それは不思議な味がした。強いてその味を表現するなら血の味……。その瞬間から樹権の体は大きく変化。「血が飲みたい!」という気持ちが大きくなってくる。もなみは吸血鬼一族の末裔で、これから先の長い年月を自分と一緒に生きていくパートナーとして樹権を選び、自らの血を混ぜたチョコを食べさせたのだ。

 内田春菊の同名ホラーコミックをもとに、『ゾンビ自衛隊』の友松直之と『東京残酷警察』の西村喜廣が共同監督したスプラッタ・アクション・ラブコメディ。主人公の吸血少女を演じるのは川村ゆきえ、少女フランケンを演じるのは乙黒えり、ふたりに翻弄される吸血鬼になりかけのイケメン高校生を斎藤工が演じている。この3人の三角関係が物語のベースだ。話は無茶苦茶だが、これが面白い。何しろ吸血鬼はホラー映画屈指の人気キャラクターだし、フランケンシュタインも映画史の初期から何度も映像化されている人気者。この映画ではその2大モンスターが女子高生となり、セーラー服姿で激突するのだ!

 原作では「吸血少女」の話と「少女フランケン」の話は独立していて直接対決はないそうだが、映画で夢の対決(大昔の東映まんが祭でやってた「デビルマン対マジンガーZ」みたいだな)を果たした結果は「吸血少女」の勝ちということらしい。しかしこれこそが、この映画にとって最大の弱点でもある。登場するキャラとしては「少女フランケン」の方がずっとずっと魅力的で、「吸血少女」もその恋人となるイケメン君もまるで影が薄いのだ。

 古ぼけたマントと尖った牙、獲物(人間)を襲う際にパックリと顔の半分が避けたように開く大きな口、体の傷口から吹き出した血液を自由自在に固定化し、ある時は車輪に、ある時は剣に変化させて戦う吸血少女も、これまでの吸血鬼映画にない新しさを持ってはいる。しかしビジュアル面で、少女フランケンの方がその何十倍も強烈なインパクトなのだ。全身の醜い縫い跡や飛び出した釘などはこれまでのフランケンシュタイン像を踏襲しつつ、腕や足など四肢のパーツを電動ドリルで自由自在に付け替えて変形するというアイデアはすごい! 巨大なカッターナイフを持った腕を脳天にネジ留めして高速回転させ、ドラえもんのタケコプターのように空をとぶ姿には度肝を抜かれた。過去の映画で、これほど強烈なビジュアルを持つ女性モンスターはあっただろうか? アクションが受け身に徹する吸血鬼カップルに対し、自ら動いていく能動的なアクションも少女フランケンのキャラを強くしている。

8月15日公開予定 シアターN渋谷、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー
配給:エクセレントフィルムパートナーズ 配給協力:ゴー・シネマ
2009年|1時間25分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.ponycanyon.co.jp/Kyuketsu-syojyo/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:吸血少女対少女フランケン
原作:吸血少女対少女フランケン(内田春菊)
関連DVD:友松直之監督
関連DVD:西村喜廣監督
関連DVD:川村ゆきえ
関連DVD:斎藤工
関連DVD:乙黒えり
関連DVD:津田寛治
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