それいけ!アンパンマン

だだんだんとふたごの星

2009/07/20 TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン6)
短い話の2本立て上映だけど、どちらも面白くできている。
脚本作りのセオリーに忠実なのだ。by K. Hattori

それいけ!アンパンマン だだんだんとふたごの星  劇場版『アンパンマン』の21作目。『ドラえもん』の映画も長く続いているし、『ポケモン』も長いけど、『アンパンマン』はそれよりずっと地味ながら、なにげに20作オーバーとは大したもの。劇場1作目の『それいけ!アンパンマン キラキラ星の涙』が1989年製作だから、今度の映画は劇場版『アンパンマン』の20周年記念作でもある。20年も続くシリーズになると、若いお父さんやお母さんの中には親子2代でアンパンマンのファンという人もいるんだろうな……。

 劇場版の『アンパンマン』が地味なのは、上映時間がコンパクトだからかもしれない。たいてい1時間弱ぐらいの中編なのだ。今回の映画も50分の中編と20分の短編の併映作。しかしこれは手抜きとか低予算ということではなく、対象としている観客の年齢構成を考えて、アンパンマンが好きな幼い子供たちの集中力が持続できる時間にしているのだろう。アンパンマンの客は1歳ぐらいからいるのだ。それに1時間半の映画を黙って観ていろなんてまるで無理な注文。残念なのは今回2本の映画を続けて上映し、結果としては70分ぐらいの上映時間になってしまったこと。できれば併映の短編と中編の間に、5分か10分の休憩を入れてほしかった。1時間以上になると子供は集中力が途切れてくる。今回映画館で観ていると、最後の10分か20分を残して退席していく家族連れが結構いたように思う。

 『アンパンマン』をいつも観ているわけではないのだが、今回の映画は2本とも上映時間が短く、物語に大きなひねりなどは存在しない。しかし単純ではあっても、物語の構成はしっかりしていてわかりやすく、これが映画版『アンパンマン』の持ち味かもしれないと思う。

 シド・フィールドの脚本入門を最近読んだのだが、例えば今回の映画では短編『ばいきんまんVSバイキンマン』が、まさにフィールド流の三幕構成にぴったりはまっているのだ。第1幕は状況設定で、ベレちゃんと魔法の絵筆を紹介する。プロットポイント1は、絵の中からバイキンマンが飛び出してくるところ。第2幕は葛藤で、ばいきんまん同士が主導権争いを繰り返す。プロットポイント2は、ふたりが打倒アンパンマンという共通目的のために協力を約束するところ。第3幕は結末で、ばいきんまんたちは勇んでアンパンマンのところに向かうが、あっと言う間にやっつけられて「ばいばいき〜ん」となってオシマイ。

 こうした三幕構成は『だだんだんとふたごの星』も同じ。第1幕でふたごの星の妖精が紹介され、プロットポイント1でそのひとりキラリが行方不明になる。第2部では巨大ロボットのジャイアントだだんだんや、黒い星の子ギラリ、デビルスターの出現などで大混乱し、プロットポイント2でギラリの正体がキラリだと明かされる。第3幕はみんなで力を合わせて、デビルスターを食い止めることに成功する。

 短い映画だと、分析が楽だね。

7月4日公開 銀座テアトルシネマほか全国ロードショー
配給:東京テアトル、メディアボックス
2009年|1時間12分(2本合計)|日本|カラー
関連ホームページ:http://anpanman.jp/movie2009/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:それいけ!アンパンマン だだんだんとふたごの星
サントラCD:それいけ!アンパンマン だだんだんとふたごの星
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