男と女の不都合な真実

2009/07/30 SPE試写室
身も蓋もない男のホンネトークが冴えるラブコメディ。
話の作りは古典的だがネタ的に新しい。by K. Hattori

The Ugly Truth [Original Motion Picture Soundtrack]  サクラメントのローカルTV局に務めるアビーは、段取りと仕切りの才能でバリバリ仕事をこなす敏腕女性プロデューサー。ところがこの才能が恋愛面ではマイナスに作用し、いまだ良縁に恵まれないまま婚活に精出す毎日だ。新たに番組に招かれたゲストコメンテーターのマイクは、男のホンネむきだしの激辛トークが大人気。しかしその恋愛観が自分とはまるで違うことも、アビーには腹立たしくしゃくに障るのだ。ところが彼女は、隣家に越してきたイケメン医師のコリンに一目惚れ。なんとか彼を振り向かせようと、心ならずも宿敵マイクのアドバイスを受けることになる。マイクの作戦は図にあたり、アビーとコリンは無事交際をスタートさせることになったのだが……。

 男勝りだが恋愛下手のキャリア女性と、彼女をまるで女とは見なさないライバルの男が、衝突を繰り返しながら最後は結ばれるというスクリューボールコメディ。主人公たちが膨大な台詞を繰り出す一筋縄では行かないキャラクターに設定されているのに対して、周辺人物たちは類型的なキャラクターに徹している。これは1930年代から40年代のハリウッドで流行した、古典的なラブコメディのスタイルを踏襲しているのだ。男のホンネで迫るマイクが、アビーを男の気持ちをそそるセクシー美女に変身させていくくだりは『マイ・フェア・レディ』にも似ている。要するにこの映画は、話の作り方としてはきわめて古典的でオーソドックスなもの。セックスがらみのきわどいギャグで観客を爆笑させながら、映画が下品にならないのは物語の作りが古典の型をきちんと守っているからかもしれない。もちろんロバート・ルケティックの演出が、羽目をはずさないギリギリの一線を守っているということもあるのだろうけれど。

 主人公以外は類型的で薄っぺらな人物でも構わない映画なのだが、この映画の弱点はアビーの王子様であるコリンにいまひとつ魅力が欠けていること。どのみち最後は主人公たちが結ばれると誰もが予想する映画ではあるけれど、それにしたって三角関係をもう少し盛り上げて「あるいは?」「ひょっとすると?」と観客を多少はハラハラドキドキさせてもらいたいのだ。そのためにはコリン役にジェラルド・バトラー(マイク役)に負けないだけの、有名な俳優を持ってきてほしかった。エリック・ウィンターが悪いわけではないのだが、僕は映画を観ながら途中まで絶対にコリンがゲイなんだと思ってた。コリンは映画の中では当て馬みたいなもので損な役なのだが、アビーはコリンと付き合わなければ自分のマイクに対する本当の気持ちに気づかない。アビーは理想の男を手に入れてみて、初めて「自分が求めていたのはこれじゃなかった!」と気づくのだ。

 それにしても久しぶりに大笑いしたコメディ。試写室は補助椅子も出る超満員で、それが何度も沸くような爆笑に包まれるのだ。これはぜひとも映画館で観てほしい。

(原題:The Ugly Truth)

9月18日公開予定 TOHOシネマズ有楽座ほか全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2009年|1時間35分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|SDDS、ドルビーデジタル、DTS
関連ホームページ:http://www.otoko-onna.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:男と女の不都合な真実
サントラCD:The Ugly Truth
関連DVD:ロバート・ルケティック監督
関連DVD:ジェラルド・バトラー
関連DVD:キャサリン・ハイグル
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