エッチを狙え!

―イヌネコ。―

2009/08/04 TMシアター新宿
男性恐怖症の女性教師とギャル女子高生の心と体が入れ替わる。
安っぽい映画だが宮内知美は良かった。by K. Hattori

Inuneko  2004年に単行本が発売された葉月京の人気コミック「イヌネコ。」を、元ミニスカポリスの宮内知美と、ワキ毛アイドルとして注目されている矢吹シャルロッテ主演で実写映画化したラブコメディ。「イヌネコ。」だけではわかりにくいと判断されたのか、メインタイトルは『エッチを狙え!』になって『イヌネコ。』はサブタイトルに降格。こんな映画はどうせ原作のファンと主演女優目当ての人しか観ないんだから、タイトルは原作通りの『イヌネコ。』のままでもよかったと思うけどなぁ……。

 女子校の美人教師・星川幸は、男性に触れられただけで全身にじんましんができて失神してしまうという極度の男性恐怖症。そんなことも知らず彼女に一目惚れした神田寅一は、女装して彼女の勤務する高校に入学し、いつか自分の思いを彼女に伝えようと心に決めていた。ところがそんな寅一の前に現れたのは、ずっと離れて暮らしていた従姉妹の青井マキノ。奔放で積極的なイケイケギャルに変貌していたマキノは、なぜか勝手に「わたしは寅一オニイにバージンを捧げる!」と決めつけ、一人暮らしをしている寅一の部屋に転がり込んでくる。マキノの出現で女装男子だとばれて学校も追い出されてしまった寅一だったが、そんな彼の目の前で、星川先生とマキノの心と体が入れ替わるという大事件が発生。ふたりは入れ替わった心と体を元に戻そうと奮闘するのだが……。

 物語や脚本のデキはともかくとして、ビデオ撮りの画面も含めて全体にきわめてチープな印象の映画。ヒロインを演じた宮内知美と矢吹シャルロッテが先にありきという企画かもしれないが、ふたりの間で右往左往する寅一とう役にあまり魅力がないのは残念。これはキャスティングの問題でもあるのだが、どこかで寅一が男気を見せるエピソードを挿入してほしかった。回想シーンで子供時代のちょっといい話が出てくるのだが、これだけでは弱いのだ。狂言回しみたいなものではあっても、一応は三角関係の要になる役。この要がぶれまくっているため、物語全体がどうにも軽くなってしまうのだ。

 憧れの星川先生に童貞を捧げると決めていた寅一が、心と体の入れ替わってしまった先生とマキノのどちらを選び結ばれるのか……というのが映画後半のテーマになってくる。しかし寅一が結局は「憧れの星川先生の肉体」と「自分にベタ惚れのマキノの心」の両方を手に入れてしまうという展開は、ちょっと都合がよすぎるのではないだろうか。ここでは男が女性に惹かれるのは「外見」なのか「内面」なのかという問いに対して、何の答えも出ていないのだ。寅一は一目惚れした「外見」を手に入れ、自分に愛を捧げる「内面」をも手に入れるのだからじつに図々しい話だ。こういう展開にするなら、最後にもう一度、星川先生とマキノの人格を入れ替えて元に戻してほしかった。その時、それでも寅一はマキノを選んだだろうか?

8月29日公開予定 池袋シネマ・ロサ
配給:ビデオプランニング 宣伝:アルゴピクチャーズ
2009年|1時間28分|日本|カラー|ビスタ|ステレオ
関連ホームページ:http://inu-neko-movie.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:エッチを狙え! イヌネコ。
原作:イヌネコ。(葉月京)
関連DVD:金田敬監督
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