ブルー・ゴールド

狙われた水の真実

2009/11/19 映画美学校第1試写室
日本が世界有数の「水」輸入国だったと知ってましたか?
水を巡るいろいろな話題が盛り沢山。by K. Hattori

Blue Gold: World Water Wars [DVD] [Import]  日本は天然資源の乏しい国だと言うが、じつは豊富に恵まれている天然資源がひとつだけある。それは「水」だ。日本では無料で手に入るものの代名詞のように言われ、「湯水のように散財する」とか「水に流す」「水をかける」など水にまつわる慣用句も多い。そのどれでも、水自体が経済価値を持つという認識は持たれていない。水は空気と同じで、何もしなくても手に入る当たり前の存在なのだ。しかし国際的には数十年前から、水資源の保全や確保に多大な労力が費やされている。国連では2003年が「国際淡水年」だったし、1981年から90年までが「国際水供給と衛生の十年」、2005年からは「「命のための水」国際の十年」に定められている。水の問題は地球温暖化と同じぐらい重要な国際的課題であり、それはひょっとすると温暖化問題より深刻なのかもしれないと考えられているのだ。

 この映画はそんな「水」についてのドキュメンタリー。原作は邦訳も出ているモード・バーロウとトニー・クラークの著書「『水』戦争の世紀」で、原作者たちはインタビューイーとして映画にも登場している。映画の中では世界各地で起きる水を巡る争いが紹介され、国際的な水の取引や農作物として世界中を移動していく水についてその危険性が述べられている。だが正直言ってこの映画は、内容を詰め込みすぎていて何を言っているのかわかりにくくなってしまっている。水道料金値上げによって貧しい人々が大変な苦労をしているという問題と、水源を企業が買収してミネラルウォーターの瓶詰め工場を作るという話と、農作物を通じての国際的な水移動という話はつながらないのだ。「水の話」という共通点はあっても、それ以外の接点がない話があれもこれも並列されている。

 それでも日本人である僕にとって興味深い話題は、例えば農作物や加工食品、工業生産物などの形で日本に運び込まれてくる「バーチャル・ウォーター」という概念だった。日本には水資源が豊富で、ミネラルウォーターなどを除けば誰もそんなものに金を払うまいと思っていたのだが、ジュースやビールやワインなどの加工品、農作物や畜産品などの生産に使われる水、工業品の加工や生産に使われる水などの形で大量の水を輸入しているらしい。農作物を育てるには水がいる。その水は、産地の近くの水源から農業用水を引いてくる。使われた水は穀物や果実に蓄えられて日本に運び込まれるが、こうして輸出されてしまった水はもう二度ともとの水源に戻ることはない。小学校の理科の教科書で見たような素朴な水の循環は、国際的な物流によって今や遮断されているのだ。

 日本は水資源の豊富な国だが、じつは食料輸入を通じて世界の水問題と直接につながっている。世界中で起きている水を巡る争いに対して、日本人は他人事ではいられないのだ。食糧自給率の問題がしばしば言われるのだが、今後は水のことも考えねばなるまい。

(原題:Blue Gold: World Water Wars)

1月16日公開予定 渋谷アップリンク、ポレポレ東中野、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
配給:アップリンク
2008年|1時間30分|アメリカ|カラー|1:1.66|ステレオ
関連ホームページ:http://www.uplink.co.jp/bluegold/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ブルー・ゴールド/狙われた水の真実
DVD:Blue Gold: World Water Wars
原作:「水」戦争の世紀(モード・バーロウ、トニー・クラーク)
関連DVD:サム・ボッソ監督
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