アバター

(3D/字幕版)

2010/01/25 TOHOシネマズ錦糸町(Screen 2)
3D映画時代の本格幕開けを告げるモニュメント。
物語はSF版『ダンス・ウィズ・ウルブズ』。by K. Hattori

アバター  1997年の『タイタニック』で全世界を席巻したジェームズ・キャメロン監督が、12年ぶりに発表した2時間42分のSF超大作。前作は歴史的な海難事故に材を採った大メロドラマだったが、今回は最新テクノロジーを存分に使ったSFアクション・アドベンチャー。キャメロン監督はもともとこのジャンルが得意で、デビュー作『殺人魚フライングキラー』や出世作『ターミネーター』以来、『タイタニック』を唯一の例外としてすべての作品がSFやアクション・アドベンチャーだ。今回の映画はキャメロン監督が、自分自身のホームグラウンドに帰ってきた作品なのだ。

 鉱物資源開発のため外宇宙の惑星パンドラに乗り込んだ人類は、惑星の先住民ナヴィたちとの衝突を避けるため学者を中心とする先遣隊を現地に派遣。遺伝子工学により作られたナヴィと同種の肉体を持つアバターを使って、先住民との交渉と原住民の教化にあたらせていた。海兵隊員のジェイクは急死した双子の兄の身代わりとしてこのプロジェクトに参加。彼は戦争で負傷し下半身不随となっているが、アバターになればパンドラの大地を自由自在に動き回ることができる。だがこの作戦には、ナヴィたちを彼らの聖地から追い出し、豊富な鉱物資源を奪い取る目的が隠されていた。ナヴィの女性ネイティリと愛し合うようになっていたジェイクは、人間とナヴィたちとの間で板挟みになってしまう。

 物語の骨格は、アメリカが西部開拓時代に起こした数々のインディアン戦争をモデルにしている。先住民の聖地から鉱物資源が発見されたため土地を武力で奪い取るというアイデアは、スー族の聖地だったブラックヒルズがモデルだろう。主人公ジェイクがナヴィの文化に魅了され、ナヴィの女性と愛し合い、最後はナヴィの側に立って人間たちと戦うという筋立ては、ケヴィン・コスナーの『ダンス・ウィズ・ウルブズ』にそっくり。『エイリアン2』で監督と組んでいるシガニー・ウィーヴァーは、リプリーというより『愛は霧のかなたに』のダイアン・フォッシーに近い人物として描かれている。おそらくこの映画が通常の映画として公開されるだけなら、「SF仕立てのインディアン西部劇」「アメリカ人の先住民に対する贖罪意識」といった切り口で批評され、ごく短い間に忘れ去られてしまったと思う。だがこの映画には、ストーリーの魅力以上に映像の魅力がある。大画面の3D映像による、バーチャルリアリティ体験だ。

 3D映画というのはかつて新宿にあったIMAXシアターなどでもさんざん観たが、だいたい30分も画面を見つめていると目がちかちかして頭痛がしてくるようなものだった。それをこの映画は、2時間半以上にわたって上映し続ける。技術進歩でちかちかも頭痛もなくなったのだ。かつて『ジャズ・シンガー』が映画のトーキー化にはたしたのと同じ役目を、『アバター』は3D映画の分野で果たそうとしているように思える。

(原題:Avatar)

12月23日公開 TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
配給:20世紀フォックス
2009年|2時間42分|アメリカ|カラー|シネスコ|ドルビー・デジタル、DTS、SDDS
関連ホームページ:http://movies.foxjapan.com/avatar/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:アバター
サントラCD:アバター
サントラCD:Avatar
関連書籍:アバター 公式完全ガイド
関連書籍:The ART of AVATAR ジェームズ・キャメロン『アバター』の世界
関連DVD:ジェームズ・キャメロン
関連DVD:サム・ワーシントン
関連DVD:ゾーイ・サルダナ
関連DVD:シガニー・ウィーバー
関連DVD:スティーヴン・ラング
関連DVD:ミシェル・ロドリゲス
関連DVD:ジョヴァンニ・リビシ
ホームページ
ホームページへ