コララインとボタンの魔女3D

2010/02/03 アキバシアター
古い屋敷に隠された小さなドアは別世界への入口だった。
奇想天外なストップモーション・アニメ。by K. Hattori

Coraline: A Visual Companion  『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』『ジャイアント・ピーチ』のヘンリー・セリック監督最新作は、ひとりの少女が奇妙な世界に迷い込むダークファンタジー。全編CGかと思ったら、これは『ナイトメアー〜』などと同じストップモーション・アニメ(人形アニメ)なのだという。観ているだけで気が遠くなりそうだが、おそらくこうした技術は遠からずCGに移行するだろう。この映画と同じものは、現在のCG技術でも何ら遜色なく映像化できそうだからだ。この映画は3Dになっているのだが、映像の3次元化もカメラポジションを自由に設定できるCGの方が有利に働きそう。ストップモーションでないと表現しにくい職人芸的な世界というものもあるのだろうが、それはコンピュータ上にどのようにその技法を取り入れるかという別次元の話になる。今後ストップモーション・アニメは短編作品などに限定され、長編作品については製作行程が管理しやすいCGに切り替わっていくだろう。

 両親と共に古い屋敷に引っ越してきた少女コララインが、壁にある小さな抜け穴を通って別の世界と行き来する話だ。穴の向こうにある世界はこちら側の世界とほとんど同じだが、少しずつ違うところもある。それは人間たちの目がすべてボタンになっていること。でもそれさえ気にしなければ、向こうの世界はコララインにとって心地よい場所。こっちでは両親が仕事に夢中でぜんぜん相手をしてくれないけれど、穴の向こうのもう一組の両親はコララインをお姫さまのように扱ってくれる。穴のこちら側の陰気で不気味な隣人たちに比べると、穴の向こうの世界の隣人たちはサービス精神満天の楽しい人たちばかり。だがしばらくするとコララインは知ってしまう。穴の向こうの世界は、恐ろしいボタンの魔女が作りだしたまやかしだということを。かつてこの屋敷では、何人もの子供たちが行方不明になっている。それもすべて、ボタンの魔女の仕業なのだ……。

 原作はニール・ゲイマンの同名小説だが僕は未読。共通点を感じたのは映画『オズの魔法使』や『不思議の国のアリス』だ。現実の世界と幻想の世界に同じ人間たちがいて、それぞれに役割がちょっとずつ違うという部分は『オズの魔法使』に似ている。ドロシーは現実の生活が不満で家出をするが、途中で竜巻に出くわしてオズの魔法の国に迷い込む。でも最後はやっぱりオウチに帰りたい。これはコララインとそっくりだ。彼女も現実の生活にウンザリしていて、穴の向こうの生活に魅力を感じる。でも最後は穴のこちら側に戻ってくる。穴をくぐり抜けて不思議な国に行くと言えば『不思議の国のアリス』だが、そこでアリスが出会うのが謎めいた言葉を喋る不気味なネコ。コララインもボタンの魔女の世界で、人間の言葉を喋るネコと出う。古い屋敷の秘密の扉は、「ナルニア国物語」の衣装ダンスの変形だろうか。

 新しい技術と古典的な物語の合体。僕はこの映画が結構気に入っている。

(原題:Coraline)

2月19日公開 TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー
配給・宣伝:ギャガ 宣伝:ミラクルヴォイス
2009年|1時間40分|アメリカ|カラー|ビスタ|5.1ch
関連ホームページ:http://coraline.gaga.ne.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:コララインとボタンの魔女
サントラCD:Coraline
原作:コララインとボタンの魔女(ニール・ゲイマン)
原作:Coraline (Neil Gaiman)
関連DVD:ヘンリー・セリック監督
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