猿ロック THE MOVIE

2010/02/05 ショウゲート試写室
人気コミック原作のドラマを劇場版にスケールアップ。
これってどこがどう面白いの? by K. Hattori

猿ロック THE MOVIE オリジナルサウンドトラック  最近の日本映画は「コミック原作」と「ドラマの映画版」ばかりがヒットしているので、ならば最初からコミック原作でドラマと映画を続けて作ろうという企画が生まれてもおかしくない。「猿ロック」がまさにそのケースだ。原作は週刊ヤングマガジンで連載されている人気コミックだが、主人公の年齢など一部設定を変更したテレビ版は昨年7月から深夜ドラマとして放送開始。放送は10月に終わって、今年1月にはDVD発売。ドラマは深夜放送だったのでDVD版で作品に触れる人も多いはずだが、それがある程度浸透したところで2月末から劇場版が公開されるという段取り。仕掛けとしては悪くないし、今後はこうしたドラマと映画の連続展開がどんどん行われていくはずだ。それがあまりあざといと「仮面ライダーディケイド」のように批判されるが、こうした手法自体は映像コンテンツ制作の戦略として今後も増えていくような気がする。今は映画とテレビドラマの間に、事実上区別など存在しないのだ。(どのみち多くの観客は、DVDで作品を観ている。)テレビドラマと映画の相乗効果で観客の取り込みが見込めるのなら、この手法はどんどん使われるべきだろう。

 「猿ロック」の原作とドラマ版は未見だが、映画はそれらを見なくても一応話が通じるように作られている。内容面で、特に戸惑うことはない。しかしながら、映画を観ていて内容にまったく戸惑わないというのも別の意味で問題なのだ。この映画は一応、ミステリー仕立てになっている。銀行強盗騒ぎの中で、銀行内から消えたひとつのトランク。そこには何が入っていたのか? 誰がそれを盗み出したのか? 犯人たちが拠点にしているスポーツジムと、警察幹部たちとの関係は? 銀行でたまたま強盗たちの人質となり、他の人質の保護に尽力したとして英雄視されている女性署長の本当の目的は何か? 主人公である若き天才カギ師サルのもとに来た、謎の美女マユミは何を企んでいるのか? 多くの謎が散りばめられ、それらをひとつひとつ説き明かしながら物語が先に進んでいく構成だ。

 ミステリー仕立ての映画は、謎が解明されるたびに「なるほど、そうだったのか!」と観客が膝を打てる心地よさにある。わからないことがわかることによる、純粋な喜び。これは脳科学者の茂木健一郎が言うところの「アハ体験」だ。ところがこの映画にはその喜びがない。怪しい人物は最初に登場したときから怪しいし、謎の答えも最初に予想される範囲内で決着が付けられる。まったく意外性がないのだ。登場人物たちは主人公たちや警察も含めて、なぜこうも無能なのだろう。観ていてイライラさせられてしまう。この映画は観客に「アハ体験」を与えてくれない。頭の悪い登場人物たちが織りなすバカバカしいドタバタに観客を巻き込むことで、観客たちにバカの世界を疑似体験させてくれる。つまりここで味わえるのは「アホ体験」なのだ。

2月27日公開予定 新宿バルト9ほか全国ロードショー
配給:S・D・P、ショウゲート
2010年|1時間52分|日本|カラー
関連ホームページ:http://saru-movie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:猿ロック THE MOVIE
サントラCD:猿ロック THE MOVIE
関連書籍:『猿ロック THE MOVIE』 オフィシャルフォトブック
ドラマ版DVD:猿ロック
原作:猿ロック(芹沢直樹)
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