グリーン・ゾーン

2010/02/18 TOHOシネマズ スカラ座
『ボーン・アルティメイタム』の監督・主演コンビが描くイラク戦争。
市街戦の描写はものすごい臨場感だ。by K. Hattori

Green Zone (Score)  2003年3月、イラク戦争勃発。国際的な反対運動が起きていたにもかかわらず、アメリカを中心とする多国籍軍はイラクに対する空爆を開始。物量に勝る多国籍軍はあっと言う間にイラク主要都市を制圧し、4月9日には首都バグダードも陥落。フセイン政権は崩壊して、正規軍による組織的な反撃は収束した。だがここから、多国籍軍の新たな戦いが始まる。散発するゲリラ的な攻撃をかいくぐりながら、戦争の大義名分であった「イラクが大量破壊兵器(核兵器や化学兵器)を隠し持っている」という証拠を探さなければならないのだ。

 アメリカ陸軍のロイ・ミラー上級准尉は部下と共にバグダード市内で大量破壊兵器の捜索活動を行っていたが、行く先々で見つかるのは空の倉庫や廃工場ばかり。こんなあやふやな情報のために、部下の命を危険にさらさせるわけにはいかないと上官に抗議しても聞き入れられない。むしろミラーの言動は「戦争の大義」を揺るがす不穏当なものだとして煙たがられる。イラク戦争には国際的な風当たりが強い。大量破壊兵器が見つからないなどと、今さら言えるはずがないではないか。不信感を募らせるミラーのもとに、市内の住宅地でフセイン政権の大物たちが秘密会合を持っているという情報が入る。現場に踏み込んだミラーたちは捕らえた男から、会合の中心人物がフセイン政権の最高幹部のひとりアル・ラウィ将軍だった事実を突き止める。将軍は逃亡したが、現場には1冊のノートが残された。このノートを手がかりにして、ミラーはアメリカ政府上層部が抱える陰謀に迫っていく。

 話の内容自体は「何を今さら」というものだ。イラク国内に大量破壊兵器がなかったことは常識だし、戦争の本当の目的は「フセイン政権打倒」こそ親子2代にわたるブッシュ大統領の悲願だったなどとも揶揄されている始末だ。実際のところは対米挑発路線で国内を統治していたフセイン独裁政権を倒し、イラクに親米的な新政権を樹立させようということにあったのだろう。映画の中の人名はすべて架空のものだと思うが、イラク国内の旧勢力を温存したまま新政権に移行しようとする考えと、旧勢力を一掃した後にアメリカ主導で新政権を作ろうとする考えの対立などは、アメリカ主導で作られた連合国暫定当局内部でのジェイ・ガーナーとポール・ブレマーの路線の違いなどを踏まえたものになっている。このブレマー路線が結果として、イラクを内戦状態に追い込んでいくことにもなる。映画はそのあたりを、巧みに絵解きしてくれる。

 しかしここで述べられている内容自体は、日頃から国際ニュースなどにそれなりに目を通している人にはやはり「何を今さら」だろう。空爆を地上から見上げるシーンの再現や、占領直後のバグダード市内の再現など見どころは多いのだが、戦争から7年たった「今」に、この映画は何を突きつけたかったのだろうか?

(原題:Green Zone)

5月14日公開予定 TOHOシネマズ スカラ座ほか全国ロードショー
配給:東宝東和 宣伝:ドリーム・アーツ WEB宣伝:スターキャスト・ジャパン
2010年|1時間54分|フランス、アメリカ、スペイン、イギリス|カラー|スコープサイズ|DTS、ドルビーデジタル、SDDS
関連ホームページ:http://green-zone.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:グリーン・ゾーン
サントラCD:グリーン・ゾーン
サントラCD:Green Zone
原作:グリーン・ゾーン(ラジブ・チャンドラセカラン)
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