ランデブー!

2010/04/07 TMシアター新宿
偶然道で拾った携帯電話から事件に巻き込まれるヒロイン。
サスペンスとしては話が回りくどすぎる。by K. Hattori

Randebu  3年前に女優を目指して上京してきた谷山めぐる。しかし売れる気配はまったくなく、今はアルバイトがメインの生活だ。田舎の母親は帰ってこいとうるさいが、まだもう少し夢を追い掛けてみたい! だがある映画のオーディションに向かう途中、彼女は道でひとつの携帯電話を拾ったことから大事件に巻き込まれてしまう。最初は単に、落とし主に直接手渡せば済むと思っていただけなのに、なぜか警察に追われ、命まで狙われる羽目に……。いったいこの電話にはどんな秘密が隠されているのか? 電話の落とし主だという矢島の正体は? そして、めぐるの運命はどうなるのか?

 携帯電話をマクガフィンにした巻き込まれ型スリラーという発想は悪くないと思うが、主人公の追い詰め方が弱いため肝心のスリルがほとんど味わえない映画になった。巻き込まれ型スリラーの要点は、陰謀の正体が何かという点ではない。そんなものはマクガフィンだ。意味なんてなくてもいい。最後の最後までマクガフィンに意味がなくたっていいのだ。大事なことはふたつある。ひとつは主人公が絶体絶命の危険にさらされているということ。主人公は最初それに気づかないが、観客はそれを知っている。そして主人公もやがて、自分がなぜかとてつもない事件に巻き込まれていることに気づく。ここから2点目の大事なこと。それは主人公が周囲に助けを求められないということだ。

 ヒッチコック映画にはしばしば、犯罪に巻き込まれた主人公が犯人と間違えられて警察に追われるという話が出てくる。これは主人公が犯人に間違われることより、主人公が警察に逃げ込めない状況を作ることが重要なのだ。警察に駆け込めない理由は、犯罪の濡れ衣を着せられる意外にもいろいろと考えられる。犯人が主人公の家族を人質にしている。警察には犯人の一味がいる。警察自体の犯罪を、主人公が知ってしまった。やり方はいくらでもある。要するに主人公を追い詰めるのだ。出口のない袋小路に追い込んで、絶対に逃げられない状況を作るのだ。追い詰められた人間は、時としてとてつもない力を発揮する。そして知恵と力を振り絞って犯人たちに反撃するのだ。

 ではこの『ランデブー!』という映画は、どれだけ主人公を追い詰めているだろうか? 僕は映画を観ながらずっと、「さっさと警察に行けよ!」と思っていた。映画の中には携帯電話を警察に届けようとするが突き返されたり、警察がじつは悪党なのではないかと疑われるようなエピソードも登場する。この脚本を書いた人も、一応はサスペンス映画のセオリーを知っているわけだ。しかしそれでも、主人公の出口を完全にふさいでいるかというとそれは疑わしい。出口をふさぎきっていないのに、ヒロインが自らの判断と意思でずるずるとドツボにはまっていくのだから、これは一言で言えば「マヌケ」なのだ。もう一言だけ付け加えるなら「アホ」ということになる。

5月15日公開予定 渋谷シネクイント、ワーナー・マイカル・シネマズ板橋、お台場シネマメディアージュほか
配給:ジョリー・ロジャー
2010年|1時間43分|日本|カラー|ヴィスタ|ステレオ
関連ホームページ:http://www.ランデブー.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ランデブー!
関連DVD:尾崎将也監督
関連DVD:宇野実彩子
関連DVD:川野直輝
関連DVD:鶴見辰吾
ホームページ
ホームページへ