バウンティー・ハンター

2010/05/13 SPE試写室
警官くずれの賞金稼ぎが捕らえた相手は元妻だった。
主演ふたりの掛け合いは楽しい。by K. Hattori

The Bounty Hunter  仮にあなたが何らかの罪を犯して逮捕されても、裁判所に保釈金を払えばすぐに保釈してもらえる(殺人などの重罪は別)。保釈金は裁判のあいだ被告が逃走するのを防ぐための担保なので、裁判が終われば返還される仕組みだ。とはいえ保釈金すぐに用意できる人は少ない。このためアメリカには、保釈金を一時的に立て替える保釈保障業という商売がある。一種の金融業だが、相手が刑事被告人(犯罪者)ばかりという特殊な商売。警察に逮捕されるような連中だから、中には借りた保釈金を踏み倒して逃げる不届きな奴も出てくる。こうした被告人は裁判所も保釈を取り消して再逮捕となるわけだが、保障業者が逮捕して裁判所に突き出せば保釈金が戻ってくるから業者も人を雇って逃走した被告を追い掛ける。この時雇われるのがバウンティー・ハンター(賞金稼ぎ)だ。

 本作はジェニファー・アニストン扮する新聞記者の元妻を、ジェラルド・バトラー扮する警官くずれのバウンティー・ハンターが追い掛けるというコメディ映画。互いの長所も短所も癖も嗜好も知り尽くしたふたりが、相手を出し抜きながら追いかけっこをするうちに、殺し屋がからんだより大きな犯罪事件を解決していくという話。ケンカ別れしたものの今でも互いに憎からず思っている(それどころか愛し合っている)元夫婦がよりを戻すとか、男勝りのヒロインが知恵と度胸でライバルでもある男性主人公をギャフンと言わせるという展開は、1930年に流行したスクリューボール・コメディの流れをくんだもの。別れた夫婦が事件に巻き込まれてよりを戻すというこのパターンは、少し前に公開された『噂のモーガン夫妻』でも使われていたこのジャンルの定番パターンなのかもしれない。

 スクリューボール・コメディとしては、導入部から中盤まではいいペース。夫が妻を誘拐同然に拉致すると、そこから妻が逃げ出して……という突拍子もないオープニングに続き、そこから時間を少し巻き戻して事情説明。時間がオープニングのシーンに追いつくと、そこからまた次から次に大騒動。いやいや、このあたりはじつに面白い。この映画の魅力はほとんどが、この中盤までにあると言ってもいい。残念なのはこのノリノリのテンポが、映画の最後までは持続しないところだ。殺し屋が現れてからは、物語のテンポがスクリューボール・コメディのそれからサスペンス・アクションに転じてしまう。ところがこの映画は、サスペンス・アクション映画としては脚本が弱いのだ。手に汗握るスリル満点のシーンはないし、火花散るような派手で大がかりなスタントシーンもない。

 しかし映画がこうなってしまったのは、脚本がスクリューボール・コメディとしても弱かったからだろう。ヒロインに横恋慕する職場のストーカー男やノミ屋のチンピラたちを、最後の最後まで温存してほしかった。彼らが消えた時点で、この映画のコメディとしての命はつきている。

(原題:The Bounty Hunter)

7月10日公開予定 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2010年|1時間50分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|SDDS、SRD
関連ホームページ:http://www.bountyhunter.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:バウンティー・ハンター
DVD (Amazon.com):The Bounty Hunter
関連DVD:アンディ・テナント監督
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