義兄弟

2010/09/22 シネマート銀座試写室
北朝鮮工作員と韓国情報員を主人公にするバディムービー。
主演はソン・ガンホとカン・ドンウォン。by K. Hattori

Gikyodai  韓国に潜入してさまざまな破壊活動を行う北朝鮮工作員。その中でも暗殺のエキスパートとして韓国情報機関からマークされているのが、《影》というコードネームで知られる凄腕スパイだ。長年《影》を追っていた韓国情報院のイ・ハンギュは、《影》による大物亡命者暗殺を防げなかったばかりか、目の前で大勢の同僚や部下や一般市民を殺傷された責任をかぶって情報院を解雇される。それから6年後、私立探偵として外国人相手の厄介な仕事に乗り出したハンギュは、現場で忘れられない顔に再会する。それは《影》による大量殺傷事件の現場から逃げ、姿を消していた北朝鮮工作員ソン・ジウォンだった。いまだ韓国内に潜伏しているジウォンをマークしていれば、そのつながりから《影》を捕らえられるかもしれない。ハンギュは何食わぬ顔でジウォンを自分の仕事に誘い、ジウォンはこれに応じる。だがジウォンもまた、6年前の事件現場で見たハンギュの顔を忘れてはいなかったのだ。

 北朝鮮と韓国の緊張関係を背景に、本来なら決して生まれるはずのなかった南北スパイ同士の葛藤と絆を描くアクション・ドラマ。対工作員捜査のベテランでありながら、捜査上の失態と南北融和政策のあおりを受けて失職した韓国情報員を演じるのは、『シュリ』『JSA』『殺人の追憶』などですっかり日本の映画ファンにもお馴染みのソン・ガンホ。現場で暗殺者《影》の命令に従わなかったことから裏切り者のレッテルを貼られ、家族の待つ北朝鮮に帰る道を閉ざされてしまった北朝鮮工作員ソン・ジウォンを演じるのは、『私たちの幸せな時間』のカン・ドンウォン。『私たちの幸せな時間』や『ノートに眠った願いごと』のチャン・ミンソクが脚本を書き、『映画は映画だ』のチャン・フンが監督を担当している。

 利害が対立することから本来なら反目敵対するはずの主人公ふたりが、いろいろな事情からコンビを組んで活動するうちに友情を育む「バディムービー」だ。恋敵、上司と部下、白人と黒人、敵味方の兵士、新人とベテラン、誘拐犯と人質、警官と犯罪者など、このジャンルの作品は膨大な数にのぼるし、その中には傑作とされる作品も多い。おそらく本作『義兄弟』も、今後はそうした傑作のひとつに数え上げられる作品となるだろう。この映画では主人公たちの反目や対立が隠蔽され、互いに相手の腹を探りながら物語が進行してゆくのがユニークだ。

 主人公ふたりのキャラクターが深く彫り込まれているので、映画が終わる頃にはこの主人公たちがすっかり好きになってしまっている。ふたりがタイトル通り「義兄弟」になってからの活躍振りを、ぜひぜひ続編で見せてほしいと思ってしまう。続編は正編に比べて面白さが劣るものだが、仮に続編の面白さが1作目の半分になっても、普通の映画よりずっと面白くなりそうだ。それぐらい、この映画の面白さはずば抜けていると思う。

(原題:義兄弟)

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10月30日公開予定 シネマート新宿、シネマート心斎橋
配給:エスピーオー 宣伝:マジックアワー
2010年|1時間56分|韓国|カラー|シネマスコープ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://www.gikyodai.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:義兄弟
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