ライトノベルの楽しい書き方

2010/10/07 TCC試写室
硬派で武闘派の女子高生ラノベ作家がお試し恋愛に挑戦。
ひどく安っぽい映画だが僕は好き。by K. Hattori

Raitonoberu  海洋生物オタクの高校生・与八雲(あたえやくも)は、出版社勤めの従姉妹・心夏(ここな)の強引さに負けて、新進ライトノベル作家・姫宮美桜(ひめみやみお)の自宅に新作の原稿を取りに行かされる。だがそこにいたのは八雲の学校で「硬派の武闘派女子学生」として恐れられているクラスメイトの美少女・流鏑馬剣(やぶさめつるぎ)だった。じつは彼女こそ、謎の多い女子高生作家・姫宮美桜の正体だったのだ。「恋愛経験がないのでラブストーリーが書けない!」という重度のスランプに陥っていた剣に、心夏は「期間限定で男の子と付き合ってみればいい」と提案。なるほどグッドアイデア! だがその相手は誰? かくして八雲と剣は「1ヶ月限定」という約束で、ぎこちない高校生カップルの真似事を始める羽目になる。剣の作ってきたお弁当を一緒に食べたり、休みの日に八雲の趣味で水族館でデートをしたり、家族の愛情をあまり知らないという剣を八雲が自分の家族に紹介したり……。こうして1ヶ月という約束の期間は、あっと言う間に過ぎてしまう。だが晴れて他人同士になったふたりの心の中には、何か言葉にできない気持ちがむくむくとわき上がる。これって何なの?

 本田透の同名人気ライトノベルを、Berryz工房の須藤茉麻主演で映画化したラブコメディ。八雲を演じるのは佐藤永典。同じ学校に通う少女で映画後半のキーパーソン、市古ゆうなを声優の竹達彩奈が演じている。監督はこれが商業長編映画デビュー作となる大森研一。映画としてのデキは、はっきり言ってかなりレベルが低いものだと思う。現実感の乏しい安っぽい物語に、平板なキャラクターの造形、工夫も何もない凡庸な演出。個々の要素を吟味していけば、この映画には他の一般的な映画に抜きん出ているところがひとつもない。しかし僕はこの映画が嫌いではない。いや、むしろ気に入っているのだ。これは安い材料に砂糖と添加物をたっぷりまぶした駄菓子の味わい。高級素材の高級料理とは別の部分で、駄菓子には駄菓子の役割がある。

 駄菓子を高級素材やこだわりの本格的な製法で作っても、それが高級和菓子や高級料理に変身するわけではない。この映画も「リアリティ」を追求すれば、物語のあちこちに手を入れてキャラクターをよりリアルにすることは可能だったはず。でも映画はあえて駄菓子に徹している。そこに僕はこの映画の潔さを感じるのだ。この映画はこの映画の世界の中で、見事にバランスと調和の取れたものになっている。安い物語、安い芝居、安い演出が、どれかひとつでも欲張って「高級」を目指してしまえば、この調和の取れた世界は崩壊してしまっただろう。

 そんなわけで本作『ライトノベルの楽しい書き方』は「駄菓子ムービー」としては良作だと僕は思ったのだが、駄菓子の魅力はその安っぽさに見合った値段の安さにある。映画の場合、入場料は原則何でも同じだからなぁ……。そこが欠点。

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12月4日公開予定 池袋テアトルダイヤ、シネマート心斎橋
配給:アートポート
2010年|1時間20分|日本|カラー|ビスタ・サイズ|ステレオ
関連ホームページ:http://ranobe.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ライトノベルの楽しい書き方
原作:ライトノベルの楽しい書き方(本田透/桐野霞)
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