幸せの始まりは

2011/01/24 SPE試写室
現役を引退したソフトボール選手が出会う恋の相手は?
主演はリース・ウィザースプーン。by K. Hattori

Howdoyouknow  子供の頃からフットボールに人生を賭けて、オリンピック優勝チームのキャプテンとしてアメリカ女子フットボールの顔になっていたリサ・ジョンソン。練習熱心でチームメイトからも慕われていた彼女だったが、「チームの若返り」を掲げるコーチから突然チームを解雇されてしまう。31歳にして人生の目的を喪失してしまったリサだったが、その前に全くタイプの違うふたりの男性が現れる。ひとりは大リーグでリリーフ投手として活躍している、ハンサムでユーモアたっぷりのマティ。もうひとりは身に覚えのない詐欺容疑で告発され、父親の経営する会社から解雇されてしまったジョージ。ふたりの男性からの熱烈なアプローチを受けて、これまで恋愛におくてだったリサはどちらを選ぶのか?

 主人公リサを演じるのはリース・ウィザースプーン。野球選手のマティをオーウェン・ウィルソンが演じ、突然会社をクビになって狼狽するジョージをポール・ラッドが演じている。ジョージの父親役には名優ジャック・ニコルソン。監督・脚本・製作は、ニコルソンと『愛と追憶の日々』や『恋愛小説家』で組んでいるジェームズ・L・ブルックス。映画の上映時間は2時間だが、人物をテンポよく出し入れしながら大小様々なエピソードを連ねて行く語り口は職人芸。登場人物たちは脇役や端役(マンションのドアマン、ジョージの元秘書の病室にワンシーンだけ登場する恋人など)に至るまで性格付けが明瞭明快で好感が持てるし、要所要所で出てくる台詞にも名台詞が多い。印象としては「折り目正しいフォーマルスーツ」みたいな映画だ。内容が生真面目というわけではないけれど、語り口が几帳面で清潔感がある。落語で言えば昭和の大名人・八代目桂文楽みたいなもの。定規とコンパスできっちり描いた正方形みたいな四角四面の語り口だが、その口跡の鮮やかさと堅実な演出は観ていて気持ちいい。

 面白い映画ではあるのだが、この映画を観ても「話の面白さ」と「語り口のうまさ」以上の大きな感動が得られるわけではなかった。それはたぶんこの映画に登場する主人公たちの世界が、映画の中だけで完全に充足して自己完結しているからだと思う。観客を映画の中に引き込み、登場人物たちと一緒に一喜一憂させるための手がかりが、この映画には乏しいようなのだ。映画がやけによそよそしい。作り手の手練手管が見えすぎて、映画を観ながら「すごいテクニックだな」と驚きつつ、心の奥の方では白けてしまうのかもしれない。「あなたは偉大で、優しくて、面白い人だわ。でも……」という台詞が映画の中にあるのだが、それは皮肉にもこの映画自体に当てはまってしまう。

 四角四面も度が過ぎると面白味がなくなる。どこかに色気やツヤのようなものが欲しい。フォーマルなスーツ姿でも構わないが、少し着くずすとか、小物で遊びを入れてもいいはずだ。これはこれで悪くないが、映画ファンはいつでも欲張り。

(原題:How Do You Know)

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2月11日公開予定 全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2010年|2時間1分|アメリカ|カラー|ビスタサイズ|SDDS、ドルビーデジタル、ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.shiawase-hajimari.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:幸せの始まりは
関連DVD:ジェームズ・L・ブルックス監督
関連DVD:リース・ウィザースプーン
関連DVD:ポール・ラッド
関連DVD:オーウェン・ウィルソン
関連DVD:ジャック・ニコルソン
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