鬼神伝

2011/04/01 SPE試写室
平安時代にタイムスリップした中学生が鬼たちと戦う。
アクションシーンは見応えあり。by K. Hattori

Onigamiden  高田崇史の伝奇SFノベル「鬼神伝」を、『劇場版NARUTO 大激突!幻の地底遺跡だってばよ』の川崎博嗣が長編アニメーション映画化。京都に住む15歳の中学生・天童純は、交通事故で父親を亡くして母と二人暮らし。学校帰りに奇妙な魔物に追われて不思議な寺に迷い込んだ純は、案内の僧・源雲に誘われるまま奇妙な世界に入り込んでしまう。そこは今から1,200年前の平安時代だった。純は源雲の法力によって、鬼たちから京の都を救うためタイムスリップさせられたのだ。純は源雲に言われるまま封印されているオロチを目覚めさせるが、戦っている鬼の正体が人間であることを知って、戦いの目的がわからなくなる。貴族たちのもとを離れて鬼たちの村に身を寄せた純は、そこで鬼と貴族たちとの戦いの歴史を知らされ、自然と調和して生きる鬼たちの暮らしに惹かれてゆく。だがそんな純の気持ちとは裏腹に、源雲率いる貴族たちの軍勢と鬼族の決戦が行われることになるのだった……。

 物語の中に源頼光(みなもとのらいこう/みなみとのよりみつ)と頼光(らいこう)四天王など、実在の人物を配置して歴史ドラマ風の味付けをしているのが見どころ。頼光と言えば丹波大江山の酒呑童子を、四天王と共に退治した話が有名。もともと大江山は京の町を襲う盗賊たちの根城で、酒呑童子はその頭領だったらしい。この盗賊たちが「鬼」を装って婦人や財物を奪い取ることに業を煮やした朝廷は、源頼光に酒呑童子の討伐を命じる。頼光は仲間の四天王(渡辺綱、碓井定光、卜部季武、坂田公時)らと共に大江山に登って、盗賊たちを退治したのだという。この話がやがて「鬼退治」の話になるわけだが、『鬼神伝』ではこれをさらにもう一度ひっくり返して、鬼退治の話を鬼の側から描いていく。鬼はもちろん盗賊ではなく、自然と調和し、自然の力を取り入れて操る力に長けた先住民たちだ。

 鬼と貴族の対立は、アメリカの先住民と開拓民の対立、あるいは騎兵隊による先住民掃討作戦などを連想させる。『もののけ姫』に登場する、製鉄の民と森の神々の対立にも似ているが、それよりは平安時代版の「インディアン VS 騎兵隊」だと考えた方がわかりやすい。「インディアン VS 騎兵隊」はジェームズ・キャメロンの『アバター』にも出てきた構図だが、これをぬけぬけと日本の平安時代に移植してみせるのがアイデア賞。

 映画の見どころは、神泉苑での鬼と貴族との大バトル。神泉苑は現在二条城の南側にちっぽけな池が残るだけになっているが、往時には二条城と同じぐらいの敷地を持つ広大な庭園だった。この広大な敷地を縦横に使って、スピーディーでボリューム感のあるバトルシーンが続く。映画終盤の山岳地でのバトルより、この庭園でのバトルが僕はお気に入りだ。地形が平面なので、むしろ立体的なアクションが映えるのかもしれない。

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4月29日公開予定 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2011年|1時間38分|日本|カラー|スコープサイズ|DTS
関連ホームページ:http://www.onigamiden.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:鬼神伝
主題歌「STARLIGHT」収録CD:The Soul Extreme EP(福原美穂)
原作:鬼神伝(高田崇史)
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