エクソシズム

2011/06/13 サンプルDVD
悪魔祓いをモチーフにしたスペイン製のサスペンス・ホラー映画。
低予算ながらわりとしっかりした作り。by K. Hattori

Exorsism  家族への不満と、将来への不安、そして不思議なことや神秘的なことに興味津々な思春期の少女の心が、悪魔を呼び出して自分自身に憑依させてしまう。突然の失神。しばしば起きるヒステリー性の発作。娘に医師の診断を受けさせようとする両親の目の前で、白目をむいて硬直した少女の身体は床から浮かび上がった。これはもうまともな状況ではあり得ない。親戚の神父の見立ては悪魔憑き。神父は両親の許可を得た上で、少女に悪魔祓い(エクソシズム)の儀式を行うことにするのだが……。

 今年はアンソニー・ホプキンス主演の『ザ・ライト/エクソシストの真実』をはじめ、エクソシスト映画の豊作年。この『エクソシズム』の他にも、秋には『ラスト・エクソシズム』の公開が決まっている。悪魔祓いの映画といえば1973年の『エクソシスト』がこのジャンルの古典。これはカトリック教会の協力を仰いで、本格的な悪魔祓いの儀式を劇中で再現しているのが見所のひとつだった。カトリック教会の中には本職のエクソシストがいて、世界のあちこちで悪魔祓いの儀式を行っているのだ。今年の3作で言えば、『ザ・ライト』もイタリアにいる実在のエクソシストをモデルにした映画だし、この『エクソシズム』も本格的な悪魔祓いの儀式を比較的忠実に再現しているように思う。(とはいえ僕自身はエクソシストや悪魔祓いについて、本で読んだ知識しか持っていないのだけれど……。)悪魔祓いを受けている少女が儀式以外の時間には正気に戻り、家族と一緒に普通に食事をしたり、友達と外出したりしている場面を観るのはこの手のジャンルの映画としては新鮮だ。実際の悪魔祓いの儀式も、悪魔に取り憑かれた人が定期的に教会を訪問するような形で行われるらしい。

 映画は最近はやりの疑似ドキュメンタリーのようなタッチだが、それは中間距離で不安定な構図のままカメラを長回しにするというスタイルによるもので、映画自体が疑似ドキュメンタリーの形式になっているわけではない。神父が儀式の様子をビデオで記録すると言ったときは「やはり疑似ドキュメント?」と思ったが、この録画テープは最後のオチに使われるだけだ。物語の中で起きていた出来事の真相をビデオテープが明らかにするという筋立てはかなりオーソドックスだが、僕はむしろこのオーソドックスさに好感を持った。低予算ホラー映画は最後までドタバタとショックシーンを乱打し、事件が解決したと思ったらだめ押しでまたショックシーンが!というあざとさが目立つこともあるが、この映画のエンディングはシンプルであっさりしたもの。安っぽい映画ではあっても、スタイリングがフォーマルなのだ。

 特撮やCGで観客を驚かせるようなシーンもあるが、それはこの映画にとってスパイスのようなもの。中心になるのは思春期の少女の家族への反発と、母と娘の複雑な感情のもつれ、その予期せぬ結末という普遍的な家族のドラマだ。

(原題:La posesion de Emma Evans)

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6月25公開予定 シアターN渋谷
配給:アット・エンタテインメント
2010年|1時間40分|スペイン|カラー|シネマスコープ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://www.at-e.co.jp/2011/exorcismus
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
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