太平洋に浮かぶイースター島。その地下には秘密の菓子工場がある。最新の設備を駆使して作られる膨大な量のキャンディやチョコレート。これらは年に1度のイースターの日に、世界中に配られることになるのだ。この秘密工場の責任者であり、イースターの日に世界中にお菓子を配って回る担当者でもあるのが、歴代のイースターラビットたち。だが先祖代々この仕事に就いている青年ラビットのイービーは、自分にはイースターラビット以外の別の生き方があるのではないかと考えている。子供の頃から情熱をかたむけてきたドラムの演奏で、プロのミュージシャンになるのがイービーの夢なのだ。彼はこっそりと島を抜け出し、夢をかなえるためハリウッドへ。そこで知り合ったのは、自分の夢を見つけられずにもがいている青年フレッドだった。
『怪盗グルーの月泥棒 3D』と同じユニバーサル映画のCG長編アニメ。ただし今回は3Dではなく、実写とCGアニメを組み合わせた2D作品のようだ。『アバター』の事例があるので、実写とCGアニメを合成した3D映像の製作が不可能というわけではないはずだし、映画を観ていても「これは3Dだと見栄えがしそうだ」というシーンが多々ある。たぶん作り手も3D化は十分に意識した上で映画を作っていたと思うのだが、なぜ2Dのみになったのかは謎だ。
物語は青年の自分探しの旅、新しい仲間との友情、父親との確執と和解がモチーフで、典型的な青春映画の体裁を取っている。しかしそこの一片の物足りなさを感じるとしたら、このモチーフがありきたりすぎて目新しさを感じないことと、青春映画に不可欠な恋愛の要素がないことだろうか。主人公たちはフレッドが20代半ばの青年、イービーも人間で言えば同じぐらいの年齢の青年のはずだが、そこから恋愛の要素を抜き取ってしまうと中学生の少年みたいに見えてしまう。主人公たちに実際に恋愛をさせずとも、きれいな異性に出会ってドギマギするぐらいの場面を入れてもよかったと思う。
そもそもイースターの朝に庭のあちこちにウサギがイースターエッグを隠し、それを子供たちが探すという話が日本人にはぴんと来ない。僕自身は教会育ちなのでイースター(キリストの復活祭)はわかるのだが、それとウサギを結びつけて庭でチョコレート探しに興じるのは海外の一部の国で行われている習俗に過ぎないのだ。イースターを背景にした映画は珍しいとか、イースターのウサギが出てくる映画はもっと珍しいという希少性はあるものの、イースターはやはりマイナーなイベントで、クリスマスほどにはワクワクしないというのが正直な気持ちなのだ。
ところで邦題だが、イースターのウサギは「イースターバニー(Easter Bunny)」と呼ぶ方が普通で、映画の主人公イービー(E.B.)もイースターバニーの頭文字だろう。なぜそれがイースターラビットになっているのだろうか。
(原題:Hop)
DVD:イースターラビットのキャンディ工場
サントラCD:イースターラビットのキャンディ工場 ノベライズ:イースターラビットのキャンディ工場 関連DVD:ティム・ヒル監督 |