レジェンド・オブ・フィスト

怒りの鉄拳

2011/08/23 ショウゲート試写室
1920年代の上海で抗日運動に参加する男の姿を描く。
『ドラゴン 怒りの鉄拳』の後日談。by K. Hattori

Legendoffist  伝説のカンフー・スター、ブルース・リー主演で1972年に製作された映画『ドラゴン 怒りの鉄拳』。ジェット・リー主演で映画化された『SPIRIT』(2006)のモデルとされる実在の武術家・霍元甲(フォ・ユェンジャア)が上海に設立した精武館の高弟・陳真(チェン・ジェン)が、死を謀殺した日本人に復讐するため大暴れするというアクション映画だが、ブルース・リーが演じた陳真という創作キャラクターはその後ひとり歩きし、多くのリメイク作品や続編作品が作られた。ドニー・イェン主演のテレビドラマ「精武門」は1995年に作られた『ドラゴン 怒りの鉄拳』のテレビ版リメイクだが、今回の『レジェンド・オブ・フィスト/怒りの鉄拳』はその続編にあたる作品だ。

 物語がは第一次大戦中のフランスで幕を開ける。中国は第一次大戦で連合国側に労働者を送り、最前線での物資運搬という危険な作業に付かせることで連合国の一員としての資格を得たという。だが戦後は欧州列強や日本が、火事場泥棒のように中国に侵入。特に日本は中国への影響力を強めていく。戦勝国であるにも関わらず、諸外国の食い物にされてしまう中国。フランスで戦った陳真は、祖国を救うため素性を隠して上海の抗日組織に加わる。上海でナイトクラブ「カサブランカ」を経営するリウの信頼を得て彼のパートナーとなり、世界各地の要人が集まるクラブで情報を集め、中国人同胞を守るのだ。だが上海の日本軍を指揮する力石は、クラブに潜入させたスパイを使って着々と包囲網を狭めて行く。陳真はそのことにまだ気づいていなかった……。

 この映画は「中国人の青年が日本人道場主に復讐する」という『ドラゴン 怒りの鉄拳』の基本的なプロットを、そのまま1920年代の上海で繰り返す。その上で、映画『カサブランカ』の味付けを加え、さらに主人公が仮面のヒーロー(ブルース・リーの出世作『グリーン・ホーネット』の引用)にしてしまう欲張りな作品だ。この映画ではそうした外部からの引用をまったく隠さない。ナイトクラブの名前はそのまま「カサブランカ」だし、このクラブに主人公が登場するシーンでは、『カサブランカ』でドイツ軍人の歌をさえぎって「ラ・マルセイエーズ」が演奏される名場面を変形させて引用している。外国勢力の腰巾着になっている警官が、主人公に感化されて祖国のために戦い始めるという展開も『カサブランカ』からの引用だろう。

 日本人の悪辣非道ぶりが描かれ、最後に日本人がこてんぱんにやられる映画ではあるが、観ていると主人公の怒りに共感して「日本人をぶっ殺せ!」という気分になる。優れた映画は立場や役割を越えて、観客に主人公との一体感を感じさせるものだ。主人公がヌンチャクで日本軍人をばたばたなぎ倒して行く場面の痛快なこと。物理法則を無視して人間が吹き飛んでいくが、それがむしろ気持ちいい。続編を期待したいぐらいだ。

(原題:精武風雲 Legend of the Fist)

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9月17日公開予定 新宿武蔵野館、立川シネマシティ
配給:ツイン 配給協力:太秦
2010年|1時間45分|香港、中国|カラー|2.35:1|ドルビーデジタルEX
関連ホームページ:http://www.ikarinotekken.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:レジェンド・オブ・フィスト/怒りの鉄拳
関連DVD:ドラゴン 怒りの鉄拳(1972)
関連DVD:精武門 TVシリーズ BOX
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