ランゴ

2011/08/25 パラマウント試写室
ペットのカメレオンが西部の町の保安官になる物語。
声の出演にはジョニー・デップなど。by K. Hattori

Rango  一流の役者になるべく水槽の中で稽古に余念のない、名無しの観賞用カメレオン。ハイウェイを走行中に飼い主の車から砂漠に放り出されてしまった彼は、猛スピードで走る車と、灼熱の太陽と、空を舞うタカから逃れて、ダートタウンというさびれた町にたどり着く。酒場にたどり着いた彼は、問われるままに口から出任せの身の上話。彼は孤高のガンマン「ランゴ」と名乗り、町長から町の保安官に任命されることになるが、就任早々、町の銀行から水が盗まれるという事件が起きる。彼は町の人たちと一緒に、盗まれた水を取り戻す旅に出かけるのだが……。

 『パイレーツ・オブ・カリビアン』のゴア・ヴァービンスキーが監督・原案・製作し、主人公ランゴの声にジョニー・デップを招いて作られた長編CGアニメ映画。流れ者の名無しのガンマンが、巨大な不正を暴いて町に平和を取り戻すという物語は『荒野の用心棒』だが、主人公が役者(のつもり)で、誤解や勘違いから素人がヒーローになってしまうという筋立ては『サボテン・ブラザース』。水の利権を巡る争いは『チャイナタウン』で、大軍に襲われる馬車は『駅馬車』だろうか。いろいろな映画から、いろいろなアイデアを引用しながら1本の作品にまとめ上げているが、僕が思うにこれは、クレージーキャッツ主演の東宝娯楽映画みたいなもの。お調子者で自信たっぷりのランゴは植木等、気の強いヒロインは浜美枝、主人公を保安官に任命する町長がハナ肇、間抜けな銀行強盗のプレーリードッグは犬塚弘・谷敬・石橋エータロー、町長の取り巻きに安田神と桜井センリといった布陣だろうか。ガラガラヘビの殺し屋ジェイクは関西弁の藤田まことだ。(ジェイクはこの映画の中でも、英国人俳優のビル・ナイが演じている。)

 こうした映画がアメリカで作られてウケてしまう背景には、もちろんアメリカ人の「西部劇への郷愁」があるのだろう。日本人で言えば時代劇に対する郷愁みたいなものだ。日本人だって小動物がチャンバラをするCGアニメを観れば、面白がるかもしれない。でもそれを外国人が観て、同じように面白がってくれるとは限らない。アメリカの西部劇についても、それと同じことが言える。カメレオンを主人公にしたこの西部劇を観て、はたして面白いと思えるだろうか。残念ながら、僕はさほど面白いと思えなかった。西部劇のパロディなら『サボテン・ブラザース』を観ればいいし、CGアニメで『荒野の七人』(と『サボテン・ブラザース』)をやった『バグズ・ライフ』も面白い。そもそも僕はこの映画のキャラクターたちが、あまり魅力的に思えないのだ。キモカワイイ(気持ち悪いけど可愛い)路線なのかもしれないが、同じキモカワイイ路線でも『9〈ナイン〉〜9番目の奇妙な人形〜』のようには感情移入できない。登場するキャラクターに、モデルとなった動物たちの特徴があまり生かされていないのも不満なところだ。

(原題:Rango)

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10月22日公開予定 新宿バルト9ほか全国拡大公開
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
2011年|1時間47分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|DTS、SRD、SDDS、SR(シアンダイ)
関連ホームページ:http://www.rango.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ランゴ
関連DVD:ゴア・ヴァービンスキー監督
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