アーサー・クリスマスの大冒険

2011/11/18 SPE試写室
イブの晩に繰り広げられるサンタ一家の極秘ミッション。
3D映像でアクションも迫力満点。by K. Hattori

Arthur_christmas  クリスマス・イブの夜、サンタクロースが全世界に配布するプレゼントの量は20億個。これだけのプレゼントを、サンタはどうやって世界中の子供たちに配っているのか? じつはサンタの住まいである北極にはサンタと100万人の妖精が住んでいて、サンタは妖精たちの協力を得ながら毎年の任務を行っているのだ。最近は装備もハイテクになり、秒刻みのミッションも滞りなく行えるようになった。ところが今年のクリスマスに、サンタは重大な事故を起こしてしまう。配るべきプレゼントのひとつが、配られないまま残ってしまったのだ。「たとえ20億人の中のひとりでも、サンタが来ないクリスマスを迎える子供がいちゃいけない!」と考えたのは、サンタの次男アーサーだった。彼はおじいサンタがこっそり隠していた旧式のソリとトナカイを使って、プレゼントを届けに行こうとするのだが……。

 製作はソニー・ピクチャーズアニメーションと、『ウォレスとグルミット』で知られるイギリスのアードマン・アニメーションズの合作。監督のサラ・スミスと脚本のピーター・ベイナムはイギリス人で、本作はアメリカ映画ながら大英帝国風味の皮肉めいたスパイスがたっぷり。無責任なくせに権力に固執するパパサンタ、引退したのに過去の栄光が忘れられず夢世もう一度のおじいサンタ、権力の継承を待ちかねて舌なめずりしている長兄のスティーブ。主人公のアーサーはこうした俗っぽさがない立派な人物なのかというと、素朴で素直ではあるが、お人好しでドジという欠点だらけの性格。要するにこの映画に登場するサンタ一家は、誰も彼も皆欠点だらけの人たちだらけなのだ。唯一まともそうに見えるのは、サンタの妻でふたりの息子の母でもあるミセス・サンタぐらい。しかし彼女には、サンタの仕事については何の権限もないのであった……。

 とは言えこの映画はストーリーよりアクションに見どころが多く、映画冒頭にあるサンタと妖精たちのプレゼント配達ミッションで観る者の目と心をガッチリと引き付ける。ミッション中に思いがけないアクシデントが起きてハラハラさせたり、予想もしないサンタの大がかりなハイテク装備に度肝を抜かれたり。映画後半はアーサーが旧式ソリを駆け回り、終盤は時間切れのサスペンスを使ってドラマを盛り上げる。いよいよ時間切れかと思われたときに救いの手が差し伸べられるあたりは、グリフィス伝来の「ラスト・ミニッツ・レスキュー」が冴える。プレゼントを受け取った子供が大喜びしている姿には、映画を観ているこちらまで思わずホロリ。

 エゴむきだしでも、最後は家族ならではの息の合ったチームワークを見せるサンタたち。続編を作るなら、次はミセス・サンタにも何か活躍の場を作ってほしい。キャラクターがしっかり出来上がっている映画なので、段取りさえ付ければすぐにでも物語は動き出すはず。次回はミセス・サンタにも活躍の場を与えてほしい。

(原題:Arthur Christmas)

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11月23日公開予定 丸の内ルーブルほか全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2011年|1時間41分|アメリカ|カラー|ビスタサイズ
関連ホームページ:http://www.arthur-christmas.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:アーサー・クリスマスの大冒険
ノベライズ:アーサー・クリスマスの大冒険
サントラCD:Arthur Christmas
関連洋書:The Art & Making of Arthur Christmas: An Inside Look at Behind-the-Scenes Artwork with Filmmaker Commentary
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