ピラミッド

5000年の嘘

2011/12/14 京橋テアトル試写室
我々がピラミッドについて知っている事実はすべて嘘だった。
なんだか不思議なドキュメンタリー映画。by K. Hattori

Pyramid5000  エジプト観光の目玉であるギザのピラミッド群は、最近起きた革命の影響で観光客が激減しているとのこと。しかしこの映画を観ると、是が非でもこの古代遺跡を訪問してみたくなる。ピラミッドはどのように作られたのか。ピラミッドは誰が作ったのか。その目的は何だったのか。この映画はこれまでピラミッドについて語られてきた定説に対して疑問を投げかけ、誰もがあっと驚く意外な仮説を提示するドキュメンタリー映画だ。しかしこの映画、何かに似ている。語られている内容に本当に目新しいものがあるのかどうか僕はよく知らないが、語り口や内容のテイストが水曜スペシャル(川口浩探検隊シリーズなどが有名)や木曜スペシャル(矢追純一のUFOシリーズ)などの怪しげなTVドキュメンタリー番組を連想させるのだ。

 繰り返しになるが、僕はこの映画で主張されている内容が本当か嘘かはまったく判断できない。しかしエジプトのピラミッドから、ナスカの地上絵、マチュピチュの遺跡、イースター島などをぐるりと回って古代の巨石文明を見せる展開は、過去に水スペや木スペでさんざん見せられたものではないだろうか。(あるいは1990年代にベストセラーになった「神々の指紋」の要素も入っているのかもしれない。)しかしそうした怪しいドキュメンタリーを浴びるように見て幼少期を送った僕からすると、この映画の作りはあまりにも下手くそだと思う。全編べったりとナレーションがかぶさり、場所も目まぐるしく移り変わって論点も多岐にわたり、映画の語り口にメリハリがないのだ。水スペや木スペにあったハッタリの利いたナレーションや、ショック効果を高める巧みな編集テクニックなどのを、この映画の作り手にもぜひ学んでいただきたいものだ。水スペや木スペのワクワクドキドキする感じが、この映画からはまったく感じられないのが残念でならない。

 この映画に取り上げられているネタの数々については、観客が映画館で観るまで伏せておいてほしいというのが配給会社や宣伝会社の意向。僕もそれは尊重して映画のネタをばらすつもりはないが、それより僕が気になるのはこの映画の成り立ちだ。映画についの詳しい資料は配付されなかったし、IMDbを見てもパトリス・プーヤール監督の経歴などがわからない。かつて『サバイブ・ルーム』というSF映画を撮って日本でもDVD発売されているようだが、それ以外のことがまったくわからない。今回の映画はテレビ放送やストレートDVD向けのものという印象で、なぜこれが日本で全国公開されてしまうのかもよくわからなかった。

 それにつけても本作にとって最大の欠点は、延々とナレーションだけが続くという「語り方」の退屈にあると思う。そこそこ有名な俳優を案内役にして要所に登場させるなど、この手の映画にはこの手の映画なりの「語り方」の定石があると思うのだがなぁ……。

(原題:The Revelation of the Pyramids)

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2月18日公開予定 新宿バルト9、丸の内TOEI、渋谷TOEIほか全国ロードショー
配給:スターサンズ 宣伝:KICCORIT、アルシネテラン
2010年|1時間46分|フランス|カラー
関連ホームページ:http://pyramid-movie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
関連DVD:サバイブ・ルーム(2003)
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