ヒューゴの不思議な発明

2011/12/20 パラマウント試写室
駅で暮らす孤児ヒューゴが出会った頑固老人の正体は?
映画史をモチーフにしたファンタジー映画。by K. Hattori

Hugo  ブライアン・セルズニックのファンタジー絵本「ユゴーの不思議な発明」を、マーティン・スコセッシが映画化。スコセッシにとって初の3D映画だ。物語の舞台は1930年代初頭のパリ。飲んだくれの叔父に代わって駅構内で大人たちに隠れて時計の整備をしている孤児ヒューゴは、構内の店舗で食べ物を盗むなどして暮らしている。ある日駅のおもちゃ屋で万引きをしたヒューゴは、店主のジョルジュにそれを見とがめられ大切にしていたノートを取り上げられてしまった。ノートを返してもらうために、店の手伝いをはじめるヒューゴ。ジョルジュの養女イザベルと親しくなった彼は、自分にとって最大の宝物を彼女に見せる。それは父が博物館で見つけて修理していた、古い自動人形だった。なぜかイザベルの持っていた鍵で動き出した自動人形は、紙の上に奇妙な絵を描きはじめる。そして最後に描かれたサイン。それはイザベルの養父ジョルジュの名前だった……。

 孤児になった少年が奇妙な自動人形を通して、ひとりの孤独な老人を救う物語だ。ベン・キングスレーが演じているおもちゃ屋の老人は、映画創生期に実在した映画監督ジョルジュ・メリエス。この映画の中には実際のメリエスと、ファンタジックに脚色された虚像のメリエスが同居している。メリエスが人気のある奇術師で、自分の劇場で自動人形を売り物にしていたのは本当の話。その後は誕生したばかりの映画の世界に入り、世界初の映画スタジオを建設して「月世界旅行」など何百本もの映画を作った。しかし第一次大戦後に破産。駅構内のおもちゃ屋で店番をしながら、ひっそりと暮らすようになっていた。すっかり映画の世界から忘れ去られたメリエスは、1930年代に再発見されて最晩年は穏やかで平和な暮らしをしている。映画に描かれているこれらの事柄は、すべて事実に基づいているのだ。

 映画に登場するメリエスは本物のメリエスとはだいぶ違うのだが、それでも劇中では映画創生期の伝説的なエピソードがいろいろと再現されている。リュミエール兄弟の最初の映画上映、メリエスの奇術師時代、スター・フィルム社での映画撮影風景、メリエスが晩年を過ごしたモンパルナス駅の売店。これらがピカピカのカラー映像で、しかも3Dで再現されているのには涙が出そうになる。映画の最後は復権したメリエスに捧げる回顧上映会だが、そこで上映されている映画が3Dになっているのにはたまげた。ひょっとするとスコセッシはこれがやりたくて、本作を作ったのではないだろうか。

 スコセッシは大学の映画学科を卒業した自他共に認める筋金入りの映画マニアだから、メリエスを主人公にした映画が撮れてさぞや嬉しいに違いない。ただしこれ、映画史マニアじゃない人が観ても面白いのだろうか。メリエスの映画は楽しいので、この映画がきっかけでメリエス作品が注目されると嬉しい。100年以上前の映画だけれど、今でも十分面白いぞ。

(原題:Hugo)

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3月上旬公開予定 全国ロードショー
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
宣伝:ティー・ベーシック、ノーフューチャー
2011年|2時間6分|アメリカ|カラー|ビスタサイズ|DTS、SRD、SDDS、SR(シアンダイ)
関連ホームページ:http://www.hugo-movie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
原作:ユゴーの不思議な発明(ブライアン・セルズニック)
サントラCD:Hugo
関連書籍:The Hugo Movie Companion
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